システム開発の失敗を防ぐために|技術選定と社内合意形成を成功させる実践プロセスとは?

ソフトウェア開発
2025年07月12日

 

はじめに|なぜ今「技術選定×合意形成」が問われているのか

システム開発では、どの技術を採用するかで開発速度や品質、保守のしやすさ、セキュリティの強さが大きく変化する。しかし現実には、「なぜこの技術を選んだのか」を明確に説明できず、社内の理解を得られないままプロジェクトが遅延や混乱に陥る事例が後を絶たない。

近年はクラウドサービスや生成AI、APIを活用した開発手法など、選択肢が急速に広がっている。一方で現場のプロジェクトマネージャー(PM)には、開発業務に加えて「提案」「交渉」「文書作成」まで求められるようになった。

本稿では、DIGILOのような技術パートナーと協力しながら、現場のPMが「技術選定」と「合意形成」をどう進めるべきかを実践的に解説する。曖昧な仕様のまま業務を任されがちな担当者や、保守・運用まで見据えた技術選定を望む方に、具体的な手法とノウハウを提供する。

技術選定の実務フロー|意思決定をスムーズにする4ステップ

現場で技術を選ぶ理想は「業務要件に合った技術を論理的に比較・検証し、関係者の納得を得て決定する」ことだ。しかし実際には「時間がない」「情報が足りない」「上司の指示で決まってしまう」といった声が多く、体系的に選定が行われていないのが現状である。

本節では、現実の制約を踏まえつつ、現場で実践できる4つのステップで技術選定の進め方を整理する。

① 要件の深掘りと前提の明文化

技術選定の第一歩は「そもそも何を解決したいのか」という業務要件を正確に把握することだ。ただし、発注元企業や事業部門から提供される仕様書や要望が不明確なケースは珍しくない。

そのためPMやエンジニアは、要件の背景や前提を丁寧に聞き取り、「何のための技術なのか」「避けたいリスクは何か」「保守は誰が担うのか」といった観点で情報を整理する必要がある。

たとえば「スケーラビリティが高い構成を」と言われても、「具体的に何件のアクセスを想定するのか」「ピーク時間帯はいつか」といった前提条件を確認しなければ、正しい技術比較はできない。

② 評価軸の設定と選定候補の比較

要件が明確になったら、次に必要なのは「評価軸」の設定である。評価軸が曖昧だと、個人の好みや場当たり的な理由で技術が決まってしまう。

主な評価軸には以下の観点がある。

  • 初期構築コスト・運用コスト
  • 学習コスト(社内の習熟度)
  • 拡張性・スケーラビリティ
  • セキュリティ要件への対応
  • 運用・保守の負担
  • 将来のサポート可否(コミュニティやベンダーの状況)

ChatGPT APIのような生成AI系の技術なら、「利用制限や従量課金の影響」「プロンプト設計のノウハウ蓄積」なども重要な観点である。比較表を用いることで、選定の透明性が高まる。

③ 小規模検証とリスク共有

候補を比較したら、いきなり本格導入せず小さなPoC(概念実証)を実施することが重要だ。プロトタイプを作ることで、想定外の技術課題やUX面の問題が明らかになることも多い。

この段階では「できること」だけでなく「できないこと」や「制約」を文書化し、関係者に共有することが肝要である。たとえば「このツールは画像生成に優れるが、社内でのファイル共有には対応していない」といった制約を早期に示すことで、トラブルを未然に防げる。

④ 最終提案と意思決定プロセスの文書化

選定候補とPoCの結果を踏まえ、最終提案をまとめる。ここでは「どのように決めたのか」というプロセス説明も重要となる。

意思決定には「やり直しが利くかどうか」という視点が有効である。Amazonの「One‑Way Door(不可逆決定)」と「Two‑Way Door(可逆決定)」のフレームワークを活用することで、技術選定の議論がより建設的になる。

「この選定は後から変更できるので、まずやってみよう」というアプローチは、関係者の心理的ハードルを下げる効果がある。

社内合意形成の実践ポイント|開発現場で使える交渉術

技術選定のプロセスがいかに適切であっても、それを社内で共有し関係者の合意を得られなければプロジェクトは前へ進まない。特に複数の部署や委託・再委託先が関与する場合、意思決定が曖昧だと後に責任や期待値にズレが生じるリスクが高まる。

本章では、現場で実践できる合意形成のポイントと、それを支える具体的アプローチを紹介する。

関係者マップを描く:決裁者・現場・再委託先の利害を整理

まず重要なのは「誰がこの選定に関わっていて、どんな立場なのか」を明確化することだ。開発プロジェクトでは以下の関係者が想定される:

  • 決裁者(情報システム部、事業責任者など)
  • 開発・運用現場(社内外問わず実装・保守を担う技術者)
  • 再委託先(外部の開発会社やインフラ管理チーム)

それぞれの利害は異なるため、「何を伝えるか」「どこで合意を得るか」の戦略を事前に立てておくことが合意形成の第一歩となる。

「意見を出し切る」 vs 「合意形成する」のバランス

意思決定の場では意見が対立することも少なくない。重要なのは、最初に「意見を出し切る」ことと、最終的に「合意形成に向かう」ことの両立である。

マイケル・A・ロベルト著『決断の本質』で紹介される「ADR(Agree, Disagree, and Commit)」は、「議論では反対意見を出してよいが、決まったら皆でコミットする」という意思決定原則を示すものである。

開発現場でも、検討段階では遠慮せず異論を交わし、導入本番では全員が同じ方向を向く姿勢が求められる。

視覚資料で伝える:図・構成図・リスク比較が信頼を生む

複雑な技術内容を関係者に伝える際、口頭だけでなく「視覚資料」の併用が効果的である。以下の資料を活用すると、非エンジニア層にも納得感を与えやすくなる:

  • システム構成図
  • フロー図(業務や処理の流れ)
  • 技術比較表(コスト、保守性、制約など)
  • リスク一覧と回避策

丁寧に作成された図や比較表は、「きちんと検討されている」という安心感を生み、合意形成を後押しする。

選定ミスを防ぐ!チェックリスト&実務Tips集

技術選定は一度失敗すると、開発後の改修コストや関係者との信頼関係に深刻な影響を及ぼす。特に選定理由が曖昧だったり、合意形成が不十分なまま進んでしまうと、「なぜこの技術を選んだのか」「誰が責任を持つのか」が後から問題になる可能性が高い。

本節では、「選定ミス」を未然に防ぐチェックリストと現場で使える実務的なTipsを紹介する。

ツール比較時に確認すべき8項目

確認項目 説明
導入・ライセンスコスト 初期費用やランニング費用を評価
運用・保守にかかるコスト 長期運用時の負担を把握
学習コスト 既存人材で対応可能か
拡張性 将来機能追加に耐えうるか
セキュリティ要件 ログ管理・認証方式などを評価
国内外の導入事例・サポート体制 実績と信頼性を確認
SLAやベンダーサポートの信頼性 緊急時の対応可否を把握
移行のしやすさ 既存環境からの切替難易度を検証

「とりあえずこの技術で」にならないために

技術選定でありがちなのは、「先に技術が決まっていて、それに業務を合わせる」形で進んでしまうパターンである。こうなると業務要件とのズレが生じ、無理な仕様変更や手戻りにつながるリスクが高い。

回避策としては、「技術を選ぶ前に、何を解決したいのかを一枚の図にする」ことが有効だ。業務課題や現状の制約を可視化し、それに合う技術を選ぶ流れにすれば、選定精度が格段に向上する。

再委託や運用を前提にした責任分界線の引き方

複数のベンダーや再委託先が関わる場合、「どこまでが自分たちの責任か」を明確化しておくことが重要である。たとえば以下のような境界線を事前に定義しておく。

  • 誰がAPI仕様を管理するか
  • バグ対応やセキュリティパッチの責任はどこにあるか
  • システム障害時のエスカレーション先と対応範囲

こうした「責任の分界線」を最初に引いておけば、後工程での混乱や予期せぬ手戻りを最小限に抑えられる。

ChatGPT APIなど新技術の選定はどう考えるべきか?

生成AIやLLM(大規模言語モデル)といった新技術は、開発現場に新たな価値をもたらすと同時に、選定・導入の難しさも伴う。特にChatGPT APIのような生成系APIは、「使いたい」という期待と、「実務に落とし込むにはどう整理すればいいのか」という不安が交錯する領域だ。

「使えそう」から「使える」へと変える問いの立て方

新しい技術には「おもしろそう」「業務で使えそう」という感覚が先行しがちだが、導入検討時には次のような問いを立てることが重要である。

  • この技術は、現場のどの業務プロセスを効率化するのか?
  • 導入によって、どの数値(時間、コスト、品質)が改善されるのか?
  • 保守・運用時に想定される課題は何か?

たとえばChatGPT APIをFAQボットに活用する場合でも、「誤回答が出たときに誰が責任を持つのか」「学習データの更新フローはどうするのか」といった運用面の整理が求められる。

セキュリティ・法令面からのチェックは必須

生成AI活用において特に重要なのは、セキュリティとコンプライアンスである。以下の点は必ず事前に確認すべきである。

  • 入力データの保存有無と暗号化状況(OpenAI、Azure OpenAI等)
  • 社内の機密情報や個人情報の取り扱いルール
  • 出力結果の検証・フィードバックフローの有無
  • 日本国内のガイドライン(総務省・経産省等)への対応状況

「とりあえずAPIを叩いてみる」段階と、「社内サービスとして展開する」段階では、求められるレベルが大きく異なる。PoC段階では柔軟性を重視できても、本番環境ではリスク評価が欠かせない。

技術検証だけでなく「導入フロー」まで設計する

新技術導入では、技術面の評価だけでなく「誰が使い、誰が管理し、誰が改善するのか」といった運用設計が不可欠である。ChatGPT APIのような生成AIは、導入後の改善プロセス(プロンプト設計の最適化、ユーザーからのフィードバック収集など)を含めて体制を整えておく必要がある。

また開発現場だけでなく、業務部門・セキュリティ部門・法務部門などとの連携も早期に開始しておくと、導入の障壁を下げられる。

まとめ|技術選定と合意形成を成功させるために

技術選定と社内合意形成は、プロジェクト初期段階でありながら最も重要かつ失敗が許されないフェーズの一つである。特に現場で意思決定を担うPMやテックリードにとっては、「なぜその技術を選ぶのか」「どのように合意を得るのか」という説明責任が常に伴う。

本稿で述べたように、要件の明文化から評価軸設定、PoC実証、視覚資料による共有、関係者巻き込みを通じた合意形成まで、一連のプロセスを体系的に実践することで、選定の精度と納得感は大きく向上する。

また生成AIやChatGPT APIのような新技術を導入する際は、業務上の有効性だけでなく、セキュリティや運用面も含めた検討が欠かせない。

DIGILOでは、技術選定の初期フェーズから構成検討・PoC設計・提案資料作成支援、さらにセキュリティ整理まで、開発現場と並走するパートナーとして支援している。

「仕様が曖昧なまま丸投げされた」「社内を説得できる材料がない」といった悩みを抱える現場の方は、ぜひご相談いただきたい。実務に即した判断軸と再現性ある成功パターンの提供で、貴社のプロジェクト推進を後押しする。

DIGILOからのご提案|技術選定と合意形成を”やりきる”ための伴走支援

私たちDIGILOは、生成AI・モバイルアプリ・業務特化型ソフトウェア開発の分野で、多様な業界課題の解決を支援してきた。柔軟なカスタマイズ対応と高度なセキュリティ設計を強みに、企業のビジネス成長を支えるテクノロジーパートナーとして選ばれている。

こんなお悩みはないだろうか?

  • 「技術の選定理由を社内でうまく説明できない」
  • 「複数部署を巻き込んで合意形成するのが難しい」
  • 「運用や保守まで含めた構成検討を相談したい」

DIGILOでは、以下のような導入実績がある:

  • 医療ソフトウェア開発会社L社:ギャンブル依存症支援モバイル治療アプリの開発
  • 大学A:コロナ禍の学生間コミュニケーション促進SNSアプリの構築
  • コンサルティング企業F社:ChatGPTを活用したリサーチ・レポート出力ツール提供
  • プロジェクト管理ツール開発企業S社:非専門家でも安心して使える業務段取りツールの設計
  • 教育コンテンツ企業L社:問い合わせ対応を効率化するAIチャットボット導入

DIGILOは貴社の業務や課題に合わせたシステム開発を一貫して支援する企業です。まずはお気軽にご相談してください。

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