受託開発と共同開発の違いとは?現場視点で選ぶためのメリット・デメリットと実務ポイント解説

ソフトウェア開発
2025年06月13日

 

はじめに|なぜ今「受託開発と共同開発の違い」が重要なのか

混同されがちな両者の違い

「受託開発」と「共同開発」は、システムやアプリ開発においてしばしば並列的に語られる。しかし、その実態や役割の分担は大きく異なる。特に、発注者と開発パートナーの間でその認識がズレていると、プロジェクト後半での仕様調整や契約上の責任問題に発展することも少なくない。

たとえば、ある発注企業が「仕様を一任して開発してくれる」と思って受託開発を依頼したところ、実際には細かい仕様決定まで自社側の対応が求められ、結果的にスケジュールが遅延した、というケースもある。一方、共同開発を想定していたのに、実態は「実質的な委託」であったため、ノウハウ共有がされず、将来的な内製化につなげられなかった、という事例もあり、注意が必要だ。

それぞれの定義と立ち位置の違いを整理する

受託開発とは(責任分担・契約・成果物の所在)

受託開発とは、発注者が仕様や要件を決め、それをもとに開発会社が成果物を納品する形態です。契約形態としては、請負契約が一般的であり、完成した成果物に対する責任を開発側が負う。

このスタイルでは、仕様が明確であればあるほど、スムーズに進行する。発注者は自社のリソースをあまり使わず、開発を“委ねる”形になるため、特定のスキルセットや社内エンジニアが不足しているケースに向いている。

一方で、「契約時点で全仕様を明確に決める」ことが前提となるため、要件が変わりやすいプロジェクトや、不確定要素の多いPoC案件には適さないことがある。

また、成果物の著作権や再利用可否についても契約によって定められるため、納品物をどこまで自社で活用できるかをあらかじめ確認する必要がある。

共同開発とは(役割分担・コラボレーション・知財共有)

共同開発とは、発注者と開発パートナーが協力して要件や仕様を検討しながら開発を進めるスタイルである。契約形態は業務委託契約や準委任契約が多く、成果物に対する責任は分担される。

このスタイルの特長は、開発パートナーが「単なる作業者」ではなく、プロジェクトの一員として技術提案や改善提案を積極的に行う点にある。特に、生成AIやAPI連携といった新技術を伴う開発においては、発注者と開発側の知見を組み合わせる共同開発が効果を発揮する。

また、知的財産や運用方針についても、あらかじめ合意を形成しておく必要がある。知財の帰属先や再利用ルールが曖昧なまま進行すると、後工程や将来的な製品化の段階でトラブルに発展するリスクがある。

共同開発は、柔軟性やスピード感を持った開発が可能である一方、「対等なパートナーシップ」を築く姿勢と体制が求められる開発手法だと言える。

受託開発のメリット・デメリット(現場視点で解説)

メリット|予算管理・進行管理・リソースの最適化

受託開発の大きなメリットは、発注者の負担が比較的少なく、プロジェクトの進行管理が明確になりやすい点である。請負契約であれば、納期や成果物の定義が契約書に明記されるため、スケジュールとコストをコントロールしやすくなる。

また、自社に開発リソースがない場合でも、必要なスキルを持つ外部パートナーに任せることができるため、社内の人的リソースを本業に集中させることが可能である。たとえば、保守運用が中心のチームで新規開発案件が発生した場合、受託開発は非常に有効な手段となる。

さらに、成果物の納品が明確なゴールとして設定されるため、評価・検収・支払いの手続きもシンプルになりやすいという利点がある。

デメリット|仕様の曖昧さ・変更コスト・ノウハウが蓄積されない

一方で、受託開発のリスクとして挙げられるのが、「仕様が曖昧なまま進んだ場合のトラブル」だ。請負契約では、契約時に定めた内容に基づいて開発が進められるため、後から要件が変更されたり、想定と異なる仕様変更が発生した場合には、追加費用や納期延長が生じる可能性がある。

また、受託先が完成品を納品する構造上、開発の過程や判断の背景が社内に蓄積されにくいという弱点もある。将来的に自社で内製化や改善を行おうとした際に、「なぜこの設計になっているのか」「仕様変更の影響範囲はどこか」といった点を把握しにくくなる。

特にChatGPT APIのような新技術を活用した開発においては、使い方や運用上の注意点も含めてノウハウが共有されないと、運用後の安定性や保守性に不安が残ることがある。

このように、受託開発は明確な要件が存在し、アウトソーシングによってスピーディに成果を求めるケースには適しているが、継続的な改善や技術の蓄積を重視する場合には、慎重な設計と共有体制が求められる。

共同開発のメリット・デメリット(連携・知見共有の観点から)

メリット|柔軟性・スピード感・技術共有・共創型の価値

共同開発の最大の利点は、発注者と開発パートナーが対等な立場で連携し、プロジェクトの目的や課題を共有しながら開発を進められる点である。仕様が完全に固まりきっていないフェーズや、試行錯誤を重ねるプロジェクトにおいては、共同開発の柔軟性が大きな武器となる。

たとえば、ChatGPT APIを用いてチャット機能を自社プロダクトに組み込むケースを想定すると、このような先端技術を活用した開発では、「最初から仕様が完全に決まっている」ケースの方が稀であり、むしろ設計・検証・改善を繰り返すアジャイルな進行が求められる。

また、共同開発では発注者も仕様検討や優先順位の決定に積極的に関与するため、ノウハウや技術的な判断材料が社内に蓄積されやすく、将来的な内製化や改善につなげやすいという利点がある。開発過程で得た知見が“ブラックボックス化”せずに残る点は、長期的なプロダクト開発において非常に価値が高い。

さらに、開発パートナーが単なる実装担当者ではなく、技術選定・セキュリティ設計・運用方針におけるアドバイザー的な役割を果たすことも、共同開発の強みのひとつだ。

デメリット|責任所在の曖昧さ・合意形成・知財処理の複雑さ

一方で、共同開発にはいくつかの課題も存在する。まず注意すべき点は、責任の所在が不明確になりやすいことである。開発過程でトラブルや遅延が発生した際に、「どちらに責任があるのか」が明確でないと、プロジェクトマネジメント上の混乱を招く恐れがある。

また、開発の方向性や優先順位を都度すり合わせる必要があるため、発注者側にも継続的なコミットメントが求められる。これは、意思決定のスピードが求められる現場においては負担となる場合がある。

さらに、知的財産の帰属や利用権、成果物の二次利用に関する取り決めも、受託開発と比較して複雑である。明文化が不十分なまま進めた場合、開発後のライセンス条件や運用制限において問題が生じる可能性がある。

したがって、共同開発を成功させるためには、役割分担・合意形成・知財管理・セキュリティ体制を初期段階から明確にすることが前提となる。単に「一緒に作る」という感覚で進めるのではなく、「共に責任を持って前に進む体制づくり」が欠かせない。

契約・知財・保守方針の違いが現場に与える影響

委託 vs 共同で「成果物の扱い」が変わる

受託開発と共同開発では、成果物に関する取り決めや知的財産(IP)の扱いが大きく異なります

受託開発では、契約時に「著作権をすべて譲渡する」「一部は開発側に帰属する」など、成果物の権利帰属が明文化されているケースが多く、発注者側にとっては扱いやすい側面がある。しかし、注意すべき点は、再利用や社内転用に制限がかかる場合があるということである。たとえば、別プロジェクトでの利用にはライセンス契約が必要となった事例も存在する。

一方、共同開発においては、「どちらがどの部分の成果物を保有するのか」「商用利用はどこまで許容されるのか」といった点が個別交渉となる場合が多く、契約書の設計が不十分であると、将来的にトラブルへと発展する恐れがある。

「保守・運用まで見据えた契約」ができているか?

システムやアプリケーションの開発において、契約範囲が「納品」までに限定されている場合、運用開始後の保守やトラブル対応において“空白地帯”が生じることがある。

たとえば、受託開発の場合には、「納品後3ヶ月は無償対応」「その後はスポット対応」などの取り決めが記載されていないと、障害対応に追加費用や時間が発生することがある。また、共同開発においても、「運用に誰が関与するのか」「障害時にどのような優先度で対応するのか」といった点は、事前に整理しておくべき重要事項である。

DIGILOでは、初期段階からセキュリティポリシー・運用設計・問い合わせ対応体制までを含めた“運用設計型の開発支援”を重視しており、このようなリスクを未然に防ぐ対応をしている。

知財や再利用権、どちらが持つか曖昧なまま進めていないか?

特に共同開発においては、成果物の一部がどちらのノウハウに依拠しているかが不明確になることがある。たとえば、あるロジックが開発会社側の既存資産をベースにしている場合、それを別プロジェクトで使用できるかどうかは、クライアントにとって大きな判断材料となる。

このような曖昧さを回避するためには、初期契約において「成果物ごとの権利構造」「再利用の可否」「第三者提供の範囲」などを明文化しておくことが不可欠である。

また、ChatGPT APIのような外部サービスを組み込む開発では、API提供元の利用条件やデータの取り扱いも関係してくるため、契約設計と同時に法的・セキュリティ面での確認も重要となる。

プロジェクトの性質ごとに考える適切な開発スタイル

要件が固まっている/曖昧な場合の判断軸

プロジェクトの初期段階において、要件がどれだけ明確に定義されているかは、受託開発と共同開発のいずれを選択するかを左右する重要なポイントである。

たとえば、すでに業務フローが固まり、必要な画面や機能も決定している案件においては、受託開発が適している。請負契約のもとでスケジュールとコストを明確にしやすく、比較的短期間での開発が可能であるためである。

一方、「ユーザーからのフィードバックを見ながら仕様を調整したい」「まずはPoCで技術検証から着手したい」といったように、要件が流動的である場合には、共同開発の柔軟性が大きな強みとなる。進行しながら改善・検証を行うことができるため、変化に強く、プロダクトの完成度も高まりやすい傾向にある。

長期運用・内製志向なら共同、短期集中なら受託

開発後の運用体制や社内リソース活用の方針も、開発手法の選択における大きな分かれ目となる。

たとえば、開発後も社内で継続的に改善を行いたい、将来的には自社で保守や機能追加を担いたいといった“内製志向”を持つ企業にとっては、共同開発を通じてノウハウを蓄積することが効果的である。開発パートナーとの設計議論や技術選定の背景を把握しておけば、プロダクトの寿命を延ばしやすくなる。

一方、キャンペーン用の一時的なシステムや、短期間で成果を求められる業務支援ツールのように、期間限定かつスピード重視のプロジェクトにおいては、受託開発の方が効率的である。成果物にフォーカスし、短期間でプロジェクトを完結させることが可能であり、開発体制を絞って進行できるという利点がある。

元請け・再委託構造における最適な発注モデルとは?

現場においては、元請け企業と開発会社、さらにその下に再委託先が存在するような多層構造の開発体制が珍しくない。そのような場合、各レイヤーにどの程度の裁量と責任を持たせるかが重要な検討事項となる。

たとえば、発注元が要件を定義し、開発会社が設計・実装を行い、再委託先が一部のモジュールを担当する構成において、再委託先との関係性が受託なのか共同なのかによって、必要となるドキュメントの内容やレビュー体制が異なってくる。ここを曖昧にしたまま進行すると、品質の低下やスケジュール遅延、さらにはセキュリティリスクに直結するおそれがある。

DIGILOでは、このような多層的な開発体制においても、各レイヤーの責任範囲や情報共有のレベルを明確化することにより、スムーズかつ安全な開発体制の構築を支援している。

DIGILOが提案する“共創型開発”の実践アプローチ

技術仕様×業務要件を繋ぐブリッジ力

DIGILOでは、従来の「丸投げ型の受託開発」でもなく、「あいまいな責任分担の共同開発」でもない、“共創型開発”を推進している。これは、発注者と開発パートナーが対等な立場で協力しながらも、各自の専門性と責任を明確にした上で開発を進めるスタイルを実施している。

その中でも特に重視しているのが、「業務要件」と「技術仕様」の橋渡し(ブリッジ)機能である。プロジェクトの上流において、業務フローやユーザー体験を丁寧にヒアリングし、開発の目的や成果を明確にしたうえで、適切な技術選定や構成を提案している。

「技術の話がわからなくても大丈夫」と感じてもらえるよう、非エンジニアの担当者に対しても分かりやすく、意思決定を支援する資料・対話設計を心がけている。

ChatGPT APIやセキュリティ面への先行対応

DIGILOは、ChatGPT APIをはじめとした生成AIや各種SaaS連携技術の実装において、豊富な実績を有している。APIの制約やレート制限、セッション管理、セキュリティ上の懸念点(ログの扱いや外部通信)といった実務的な論点についても熟知しており、“使えるけれど危なくない”実装方法を提案することが可能だ。

また、セキュリティ面においても、医療・教育・エンタメ・コンサル分野での開発実績を活かし、各業界の規制やガイドラインに即した対策を標準で組み込んでいる。

発注者側にセキュリティ専門の担当者が不在である場合でも、必要な対策事項を整理し、優先度をつけて共有する体制を整備している。

保守・再委託も含めた柔軟な体制づくり

共創型開発は、「作って終わり」ではない。DIGILOでは、納品後の保守運用・改善・再委託を前提とした設計およびドキュメント整備についても、一貫して支援している。

たとえば、社内の別チームや外部ベンダーが後工程を引き継ぐことを想定し、API仕様書や処理フロー、例外処理パターンなどを第三者にも理解できる形式で整備する。これにより、属人化を防ぎながら、安全かつ持続可能な運用を実現することが可能である。

さらに、「初期は受託に近い形で、徐々に共同開発へと移行する」といったフェーズ設計の柔軟性も、DIGILOの共創型アプローチの特徴である。プロジェクトの成熟度や発注者の体制に応じて、最適な関わり方を提案している。

まとめ|「違い」ではなく「適材適所」で考える開発スタイル

受託開発と共同開発は、単なる契約形態の違いではなく、プロジェクトの進め方や成果物の扱い、関係者の責任範囲に大きな影響を与える要素である。どちらが「正解」であるということではなく、プロジェクトの性質や目的、社内体制に応じて適切に選び分けることが重要である。

受託開発は、要件が明確であり、スピードやコストの管理を重視したい場合に適している。一方、共同開発は、柔軟性が求められるPoCや、長期的に価値を積み上げていくプロダクト開発に向いている。そして、DIGILOでは、その中間に位置する「共創型開発」という選択肢を提供している。

共創型開発においては、単なる実装パートナーにとどまらず、業務要件の整理から技術提案、セキュリティ設計、保守運用支援までを一貫して伴走する。技術に明るくない発注者であっても、安心してプロジェクトを推進できる体制づくりを支援している。

開発スタイルの選定に悩んでいる企業や、これまでの外注で課題を抱えた経験のある企業にとってこそ、開発スタイルの“適材適所”を見直すことが、成功への第一歩となる。

DIGILOは、貴社のビジネス課題に応じた最適な開発体制を提案している。ぜひお気軽にご相談いただきたい。

DIGILOからのご提案|受託開発と共同開発を“適材適所”で進めるために

私たちDIGILOは、生成AI・モバイルアプリ・業務特化型ソフトウェア開発の分野において、多様な業界課題の解決を支援している。柔軟なカスタマイズ対応と高度なセキュリティ設計を強みとし、企業のビジネス成長を支えるテクノロジーパートナーとして選ばれてきた実績がある。

以下のような悩みを抱えていないだろうか。

  • 要件が固まりきっていない段階で、どのように開発を進めるべきか迷っている
  • 受託開発ではノウハウが社内に残らず、運用で支障が生じている
  • 開発スタイルを見直したいが、どこまでを外部に任せるべきか判断に迷っている

DIGILOでは、以下のような業界・企業に対する導入実績を有している。

  • 医療ソフトウェア開発会社L社:ギャンブル依存症の治療支援アプリをモバイルで構築し、継続率と利用頻度を向上
  • 大学A:学生間の交流不足を解消するSNSアプリを開発し、月間アクティブ率70%を実現
  • eスポーツ企業D社:配信・大会・コミュニティ機能を統合した次世代型プラットフォームを開発
  • コンサルティング企業F社:ChatGPT APIを活用した調査レポート出力ツールを構築し、月80時間以上の工数を削減
  • 教育コンテンツ企業L社:FAQ対応にAIチャットボットを導入し、サポート対応件数を30%削減

「まずは相談だけ」という段階でも歓迎している。現場に即した開発スタイルの選定から伴走し、最適な形でプロジェクトの成功を支援する。

業界・規模問わず多数の導入実績

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