INTERVIEW

医療スタートアップにおけるオフショア開発事例

井内 伸一

SHINICHI IUCHI
からだポータル株式会社 代表取締役

―御社の事業についてお聞かせください。

私たちからだポータル株式会社は、社会医療法人で医療情報や医療経営を経験してきたメンバーで構成されています。その経験の中で何度も「もう少し早く受診をしていれば、病気を防げたのに」という想いを抱くことがありました。その思いを抱く要因として、日本に「予防のために医療機関を受診する」という習慣があまり浸透していないという現実があります。 日本において病院とは「病気やけがをしたら行く場所」という考えの方が多いのが現状です。ですが、病気というのは症状が必ずしもはっきりと出るものがすべてではありません。症状が出てから受診をするのではなく、「どこにも痛みなどの症状がない」「どこにも苦しさは感じられない」という状態で受診し、初期状態で病気やけが、またはそれらの予兆を見つけ出し、早期に医療を受けることで重症化の予防に繋がるのです。 また、日本では少子高齢化など様々な要因により、 病気にならないことの重要性が加速度的に増しております。少子高齢化により将来の医療の担い手が少なくなっていくことが予想される中で、若い世代の健康意識向上が将来の医療崩壊を防止の一助となります。健常者へ医療サービスを提供することで いつまでも病院にかからず健康で幸せに暮らしてほしいという願いから、からだポータルは、健康増進、PHR(Personal Health Record)、医療コンサルテーションなどの事業を展開しています。

―PHR事業とはなんでしょうか?

PHR(Personal Health Record)とは、病院や薬局など医療機関がそれぞれ持っている個人の健康情報を自分で管理できる電子記録サービスのことです。その中にはカルテの情報であったり、投薬の情報、健康診断なども含まれています。つまりは「自分の体にまつわるデータ」ということです。PLR(Personal Life Record)と言われたりすることもあります。 今回私たちは、健康診断の結果をデータ化して活用することに着目しました。その第一歩としてWEB配信する仕組みを構築することになりました。 実際に重い腰を上げて健康診断に行き、いくつもの健診を終え、健診結果を受け取るまでには数週間かかることもあります。また結果を病院まで取りに行くのも億劫になりがちですし、自宅に郵送されたものを受け取っても、つい開封せずにそのまま放置してしまう、という方も多いのではないでしょうか。 私たちは利用者様の利便性を高め、健康診断へのハードルを下げるために、健診結果をWEBで活用するサービスの実現を決めました。私たちの提供する【からだポータル健診結果WEB配信】では、お手元のスマートフォンやパソコン、タブレットなどで健康診断の結果を見ることが可能です。さらに、過去の結果ともリンクをしているので、昨年の結果との比較をしたい時など、以前の健診結果を引き出しの中から探し出すこともなく、すぐに見ることが出来ます。そして、健診結果にもとづいて、その人にとって本当に必要な健康情報をお届けするサービスまで一連で提供します。

―弊社へのご依頼の背景をお教えください。

「からだポータル健診結果WEB配信」のシステムは元々は大手SIerに依頼して開発したシステムです。こちらを使用する中で改修だけでなく新機能の追加開発が必要になり、見積もりを取ったところ想定よりも高額であったことから、大手SIerに改修の依頼をすることは困難になってしまいました。 しかしながら、使い勝手をよくするためにも機能追加はマストで、コストと品質の両方をクリアした開発会社への依頼は必要でした。このような状況下で弊社の出資者よりベトナムに開発拠点を持つ日系オフショア開発企業のデジロさんをご紹介いただきました。 オフショア開発とはアプリケーションやソフトウェアの開発を海外で行うということですが、私はシステム部門責任者をしていましたので、オフショア開発によって、国内開発より費用を抑えたり、国内では確保がむずかしい人材を確保できるなどのメリットは知っていました。 システムはすでに基幹部分が完成していたので、必要なのは追加開発です。大手SIerへの追加開発の依頼は高額でしたが、デジロさんへ依頼する方が圧倒的に安価だったため、今後の開発を考えると有利と考え、デジロさんでのオフショア開発を決断しました。

―オフショア開発への不安と疑問についてお聞かせください。

オフショア開発に関して知識はありましたが、実際に使ったことはなかったので、少し不安はありました。ですが、その不安もきちんと解消されました。 最も不安に感じていたことは、こちらが伝えたいことが正しいニュアンスで開発するスタッフに伝わるのかという点です。 日本では当たり前に実装されることも、現地では解釈が違うこともあるのではないか。 結果として伝え忘れや計画忘れが起き、実装されないというようなことが起きないのか、といった不安を持っていたのは事実です。しかし、プロジェクトが始まってみれば、デジロさんのPM(プロジェクトマネージャー)は日本人で、設計段階でのやり取りは日本人同士、日本語で行うため、細かいところまで意思の疎通を図ることが可能でした。エンジニアとのコミュニケーションはデジロさんのPMとブリッジを通して行うため、現地のエンジニアと直接やり取りすることはなく、こちらの意図もしっかりと細かいニュアンスまで正確に開発スタッフへと伝わっていました。 PMやブリッジの方と定期的にWEB会議を行ったり、チャットツールなどを活用したりすることにより、伝え忘れや計画忘れのないように計画を進めることもできました。 もう一点不安に感じていたのは、安価であったとしても、実際に使えなかったり、バグが多いようでは問題で、本当に日本人が日本で作るのと同じ品質を担保出来るのかという点でした。 大手SIer側との引き継ぎの課題などもあり開始直後はやや苦戦しましたが、実際のところ、完成品や瑕疵対応については全く問題ありませんでした。 むしろ、対応が迅速で、細かい部分への提案や対応なども行なっていただいたほか、大手SIerによるシステム開発当初の瑕疵にまで対応いただくなど、コストパフォーマンスが高いと感じました。 また、設計とプロジェクト管理は日本人が行うので、品質はしっかり担保されていて、特別オフショアということを意識せずに非常にスムーズに進めることができました。 コード品質への問題も感じていません。 全体として、開発中は密にコミュニケーションを取ることができ、安心感につながりました。コストパフォーマンスがよいだけではなく、大手SIerよりも距離が近いので、対応が速く丁寧に感じられました。そのため、アジャイル開発には最適の選択であったと感じています。

―最後に今後についてお教えください。

私たちはデジロさんと出会い、システムを無事に改修することが出来ています。今までよりもさらに使い勝手がよくなり、お客様の満足度の向上につながるのではないかと期待しています。 今後予防医療がより重要になっていく世の中で、健診結果を活用したWEBサービスをより広めていき、お客様一人一人の健康管理に役立て、予防医療への意識向上の一助となれば幸いです。健康管理すること、病気にならないように予防することが子供の頃から当たり前である社会になれば、本当に健康長寿社会を実現できます。そのために少しでも貢献したいと考えています。 そして、デジロさんには、今後もよりお客様の利便性や操作性が向上するようにお力添えを頂ければと思います。

Profile

からだポータル株式会社(https://karada-portal.com/)

健康増進支援事業/健康管理システム開発/健康情報分析/オムニチャネルマーケティング/健康マーケティング/システム開発・導入支援/コンサルテーション

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