現場が動くAIリテラシー教育|開発チームと連携して成果を出す3つの設計ポイント

 

はじめに:AI活用は「使える人材の育成」から始まる

生成AIの進化により、企業活動のさまざまな場面でAIツールを導入する企業が増えている。特にChatGPTや画像生成AIなどは、企画書作成、FAQ対応、開発支援といった日常業務の効率化に大きな効果をもたらしている。

しかし、実際の現場ではこうしたツールが「活かしきれていない」「導入はしたが定着しない」という声も多く聞かれるのが実情である。その原因の多くは、「AIツールの導入=AI活用が進む」という誤解にある。

AIの価値を最大限に引き出すためには、社員一人ひとりが自分の業務においてAIをどのように活用すべきかを理解し、適切に使いこなす力、すなわちAIリテラシーを身につけることが欠かせない。これはエンジニアに限らず、営業、企画、人事といった非技術職の社員にも同様に求められるスキルである。

さらに、発注者側の立場から見ても、開発会社やパートナー企業とAIプロジェクトを進めるうえで、共通言語としてのAIリテラシーを備えているかどうかは、要件定義の質やプロジェクトの精度を大きく左右する要因となる。

本記事では、「AIリテラシーとは何か」「なぜ企業にとって教育が重要なのか」といった基礎的な内容から、開発・運用に強いパートナーと連携しながら社内に定着させる方法までを、実務視点でわかりやすく解説する。

DIGILOの実績や具体的な支援事例も交えながら、AI時代における“使える人材育成”のあり方について考察していく。

AIリテラシーとは?エンジニア・非エンジニア両方に必要な視点

単なるツール習得ではない、業務に活かす力

AIリテラシーというと、「ChatGPTの操作方法を学ぶこと」といったツール操作のスキルに目が向きがちである。しかし、企業で本当に求められているのは、それだけではない。

AIリテラシーとは、AIの基本的な仕組みや限界を理解したうえで、自身の業務にどう活かすかを判断・実践できる能力を指す。この能力は単なる知識ではなく、「理解→応用→判断」に至る一連の力が求められるものである。

たとえば、営業担当がAIを使って顧客の属性ごとに提案資料をパーソナライズしたり、バックオフィス部門がChatGPT APIを活用して契約書の下書きを自動生成したりすることができれば、業務の質とスピードは大きく向上する。

このような応用には、単なる操作スキルではなく、「AIでできること/できないことを理解したうえでの判断力」が不可欠である。

現場で必要とされる3つのリテラシーレベル(認識・応用・判断)

実際の現場でAIを活用していくためには、以下の3段階のリテラシーがバランスよく求められる。

  • ① 認識レベル(AIの基本概念や機能の理解)
     AIとは何か、どういう場面で活用できるのかといった前提知識を正しく理解する段階である。ここでは、AIの種類、代表的なツール、学習データの役割など、基礎的な内容の理解が問われる。
  • ② 応用レベル(業務への取り入れ方を考える力)
     自部門や自業務において、AIがどのように役立つかをイメージし、ツールの活用計画を立てられる段階である。現場の課題に対して、AIでどこまで自動化できるのかを検討できる力が求められる。
  • ③ 判断レベル(倫理・セキュリティ・リスクへの配慮)
     AIの出力結果が適切か、誤った判断を招かないか、情報漏洩などのリスクがないかなど、技術の裏にあるリスクを理解し、正しく使う視点である。特に個人情報や業務機密を扱う場面では不可欠なリテラシーである。

このように、AIリテラシーは「ツールの使い方」だけで完結するものではない。エンジニアだけでなく、非エンジニアも含めた全社員が適切に理解し、応用し、リスクも踏まえた判断ができることが、企業全体のAI活用の成功に直結するのである。

AIリテラシー教育の重要性と、育成しないリスク

「誤用」による情報漏洩やセキュリティインシデント

AIの活用は便利である一方、正しく使わなければリスクも大きくなるのが現実である。
たとえば、ChatGPTなどの生成AIに業務データや顧客情報をそのまま入力してしまい、機密情報が外部に漏洩する危険性が指摘されている。

こうしたセキュリティ事故の多くは、「知らなかった」「ルールがない」「誰も止めなかった」といった教育不足による誤用に起因している。
特に、外注先や再委託先を含む開発体制では、情報共有のルールが曖昧になりやすく、十分な注意が必要である。

AIリテラシー教育は、社内にセキュリティ意識と共通ルールを浸透させるための第一歩である。

エンジニアと非エンジニアの“分断”を防ぐ

現場では、AIの技術的理解を持つエンジニアと、それを使いたいビジネス部門との間に“温度差”が生まれることがある。
「何ができるのか分からない」「どう伝えればいいか分からない」といった不安は、社内のコミュニケーション断絶を引き起こし、結果として導入プロジェクトが遅延、あるいは空中分解する要因となる。

共通のリテラシーを持つことで、現場の課題を正しく共有できるようになり、開発・導入の精度も飛躍的に高まる。

AI導入プロジェクトが頓挫する理由の多くは“教育不足”

DIGILOにも、以下のような相談が多く寄せられている。

「AIを導入したが、誰も使いこなせていない」
「PoCまでは行ったが、現場への落とし込みが進まない」
「開発会社と話がかみ合わず、仕様が曖昧になった」
これらの背景には、「使う側のリテラシーが追いついていない」という共通の課題が存在する。

どれだけ優れたAIソリューションであっても、それを理解し、運用できる人材が社内にいなければ、成果にはつながらない。

AIリテラシー教育は、このような“導入後の壁”をあらかじめ取り除くための戦略的な投資である。
特に、元請企業と連携しながらプロジェクトを進める立場にある発注者にとっては、社内外におけるコミュニケーションの基盤としても機能するものと言える。

AIリテラシー教育の導入ステップと設計ポイント

ステップ① 現場業務と連動したスキルマップの設計

AIリテラシー教育を成功させるためには、いきなり研修を開始するのではなく、現場と連動した設計が不可欠である。
まずは、自社の業務においてAIをどのように活用したいか、誰がどのレベルまで理解しておくべきかを整理し、職種や部門ごとに求められるスキルレベル(スキルマップ)を定める。

たとえば、営業職であれば「顧客提案でAIを活用する視点」、開発職であれば「API連携やプロンプト設計の理解」、管理部門であれば「情報管理・セキュリティ意識」など、役割ごとに必要とされるリテラシーは異なる。

このような整理がなされないまま全社員一律の研修を行っても、現場では「意味が分からない」「役に立たない」と感じられ、形骸化した取り組みになりがちである。

DIGILOでは、事前にヒアリングを実施し、現場業務に直結するスキル設計をクライアントと共同で行う支援を提供している。

ステップ② ChatGPT APIやRAGなど実務ツールのハンズオン研修

リテラシー教育を定着させるには、座学だけでは不十分である。
実際のAIツールに触れ、「自分でも使える」という感覚を持ってもらうことが極めて重要である。

たとえば、以下のようなテーマによるハンズオン型の研修が効果的である

  • ChatGPT APIを使って問い合わせ自動化のデモを構築する
  • RAG(Retrieval-Augmented Generation)を用いて社内文書のQ&Aシステムを試作する
  • ノーコードツールとAIの組み合わせによる業務改善のユースケースを体験する

特に、開発や運用の現場と連携している発注者にとっては、こうした技術の選定や研修の導入判断を行う機会が多く、実務と接続した研修であれば現場の理解も得られやすくなる。

ステップ③ 継続学習とレビューの仕組みづくり

AIリテラシーは、一度学べば終わりという性質のものではない。
ツールやトレンドが日々変化するなかで、継続的なアップデートの仕組みを構築することが求められる。

以下のような工夫が効果的である

  • 月次での軽いチェックテストやレビューの実施
  • 社内チャットツール(例:Slack)を活用したQ&Aの共有
  • 開発メンバー主導による社内勉強会やプロンプト事例のシェア会の開催

また、再委託先などパートナー企業と連携する場合には、「どこまでを共通知識とするか」をあらかじめ定義しておくことで、やり取りの効率や精度が大きく向上する。
DIGILOでは、教育後の定着やフォローアップも見据え、段階的な導入スケジュールとレビュー設計を含めた支援を行っている。

開発・運用現場における教育設計の実務Tips

仕様書やPoCでの“ブラックボックス”を減らす教育アプローチ

AIを活用した開発では、「とりあえずAIに任せる」「出力された結果をそのまま使う」といった、ブラックボックス的な運用になりがちである。
その結果、成果物の品質や説明責任が曖昧になり、仕様書の精度が低下したり、レビューで手戻りが発生したりするリスクが生じる。

これを防ぐためには、AIの判断ロジックや出力の根拠を理解し、開発メンバー全員が納得したうえで設計・実装を進められる土壌を整えることが必要である。

教育プログラムにおいても、「プロンプトの構造」「意図した出力とのギャップ分析」「トークナイズの理解」など、設計と開発に関わる要素を取り入れることで、仕様の曖昧さを減らし、プロジェクトの透明性を高めることができる。

再委託先にも配慮したリテラシー標準の策定

10〜50名規模の開発会社では、プロジェクトに応じて外部の再委託先(協力会社)と連携する機会が少なくない。
このとき、AIリテラシーが社内でのみ共有されていても、外部との知識ギャップが大きければ、伝達ミスやトラブルの原因となる。

この課題を解消する手段として有効なのが、リテラシー標準(AIを扱ううえでの社内基準・共有ルール)を文書化し、外部にも提供可能な形に整えておくことである。

たとえば、以下のような要素を含めると効果的である

  • 利用可能なツール/API一覧とその利用ルール
  • 入力禁止事項(個人情報・機密情報など)
  • ChatGPT等の出力を成果物として使用する際のレビュー基準

DIGILOでは、このような「技術ルール+教育設計」を組み合わせた支援も提供しており、開発・保守の実運用を踏まえたナレッジの体系化にも対応している。

保守・セキュリティ部門との連携設計のすすめ

AIの活用は、開発フェーズのみで完結するものではない。
本番環境での運用が始まってからこそ、「セキュリティに配慮されているか」「出力が更新され続ける仕様に問題はないか」といった、保守・監視の視点が重要になる。

特に、SaaSやモバイルアプリのような常時稼働型システムにおいては、AIの更新頻度や出力特性が変動する可能性があるため、セキュリティポリシーと教育設計を連動させておく必要がある。

たとえば、以下のような対応が求められる

  • ChatGPT APIの利用状況をログで可視化する
  • 社内ネットワークからの送信制限やプロンプトログの保存
  • 出力結果に対するレビューとフィードバックループの設計

教育の段階から保守部門や情報システム部門と連携しておくことで、導入後のトラブルリスクを最小限に抑えることが可能である。

まとめ|リテラシー教育は“浸透”して初めて成果になる

AIを業務に取り入れるうえで、ツールの導入自体はあくまで出発点にすぎません。
真の成果を生むためには、「誰が」「どう使うのか」を社内で明確にし、それを支えるリテラシー教育が組織全体に浸透しているかどうかが鍵を握ります。
特に、開発や運用の現場に関わる発注者の立場では、以下のような観点が重要です

  • 社内・社外の関係者と共通言語でAI活用を議論できるようにすること
  • セキュリティや保守の観点から安全に活用できる体制を築くこと
  • ツールに振り回されず、自社に合った持続可能な活用方法を設計すること

DIGILOでは、こうしたニーズに応えるため、ChatGPT APIなどの最新技術を活用した教育コンテンツの設計支援、導入支援、定着支援まで一貫してサポートしています。
現場視点を重視したリテラシー教育は、AIプロジェクトの成功確率を高めるだけでなく、社内の理解や期待値を揃えることで、無駄な手戻りや誤解も減らすことができます。
今後AIをさらに戦略的に活用していきたいとお考えであれば、まずは「教育」の観点から見直してみることをおすすめします。

DIGILOからのご提案|AIリテラシー教育の導入を成功させるためにできること

DIGILOは、生成AI・モバイルアプリ・業務特化型ソフトウェア開発の分野において、多様な業界課題の解決を支援してきた。
柔軟なカスタマイズ対応と高度なセキュリティ設計を強みに、企業のビジネス成長を支えるテクノロジーパートナーとして選ばれている。

以下のような課題を抱えていないだろうか

  • 社内でAIリテラシーを高めたいが、どこから着手すべきかわからない
  • エンジニアと非エンジニアの認識ギャップを埋めたい
  • AIツールを導入したが、現場で定着せず使われないまま終わってしまった
  • 再委託先との情報共有も考慮した教育設計を行いたい

DIGILOでは、これまでに以下のような業界・企業への導入実績を有している。
教育設計から実装・保守までを一気通貫で支援し、現場に根づくAI活用を実現している。

  • 医療ソフトウェア会社L社:ギャンブル依存症の治療を支援するモバイルアプリを開発。現場スタッフ向けにセキュリティを配慮した操作教育を実施。
  • 大学A:コロナ禍で減少した学生間のつながりを回復するSNSアプリを開発。
  • コンサル企業F社:生成AIを活用した業務レポート出力ツールを構築。社内全体に向けた段階的なAIリテラシー教育を支援。
  • 教育企業L社:カスタマー対応を効率化するAIチャットボットを導入。顧客情報の安全な取り扱いを前提とした利用ルールを教育設計に反映。
  • eスポーツ企業D社:社内技術スタッフ向けにAIの仕組みと運用のポイントを解説。

開発や導入に関して悩みを抱えている場合は、ぜひ気軽に相談いただきたい。
DIGILOは、現場に寄り添うパートナーとして、貴社に最適なAI活用のあり方をともに設計していく。

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