はじめに|ECサイトの“保守・運用”を後回しにしていませんか?
ECサイトを新たに構築する、あるいはリニューアルする――そのようなプロジェクトでは、「デザイン」や「機能開発」への意識が強くなりがちである。しかし、どれだけ優れたECサイトを構築しても、それを安定して運用し続ける仕組みがなければ、ビジネスは成り立たない。
だが実際には、保守や運用を軽視した結果として以下のような問題が生じるケースが少なくない。
本記事では、「ECサイトの保守・運用とは何か」という基本的な考え方から、体制設計、費用相場、事例までを総合的に解説する。特に、DIGILOのように上流工程から技術支援を行う開発パートナーの活用を検討している発注者にとって、「どのような観点で保守・運用を捉えるべきか」を理解する助けとなる構成である。
また、セキュリティや可用性の確保、API連携など、技術的信頼性が求められる重要なポイントについても丁寧に解説している。
本記事を読むことで、以下の内容が理解できる。
「作って終わり」ではなく、「育て続ける」ために。
本記事が、ECサイト運営の安定化と成果の最大化に向けた一助となれば幸いである。
そもそもECサイトの「保守」と「運用」は何が違うのか?
ECサイトにおいて「保守」と「運用」はしばしば一括りにされがちであるが、実際にはそれぞれ異なる役割と責任範囲を持っている。この違いを理解することは、安定したサイト運営体制を構築するうえで不可欠である。
保守=「安定稼働を守ること」、運用=「価値を高め続けること」
「保守」とは、システムやインフラの不具合修正、セキュリティパッチの適用、障害対応といった「現状維持」を目的とした対応を指す。万が一トラブルが発生した場合でも、ユーザーへの影響を最小限にとどめ、サービスの安定稼働を維持することが求められる。
一方で「運用」は、商品の追加やキャンペーンページの更新、UI/UXの改善、マーケティング施策の反映など、ECサイトの価値を高め続けるための継続的な改善活動である。
保守=守りの業務(安定稼働・セキュリティ)
運用=攻めの業務(売上向上・顧客体験の向上)
と捉えると、両者の違いがより明確になるだろう。
よくある誤解:「保守・運用は後から考えればよい」
多くの発注者が見落としがちなのが、「保守・運用は開発後に検討すればよい」という認識である。しかし、設計段階で運用が考慮されていないシステムは、属人化や非効率、高コストの原因となる。
たとえば以下のような問題が発生しやすい。
こうした事態の根本原因は、「開発段階で運用・保守を見据えた設計がなされていない」点にある。
DIGILOが重視する視点:設計段階からの“運用視点”の導入
DIGILOでは、ECサイト構築において単なる機能実装だけでなく、「その後の運用がスムーズに進められるか」という観点を重視し、設計段階から丁寧に確認・提案を行っている。
具体的には以下のような取り組みを通じて、発注者と連携を図っている。
保守と運用を区別して考えることは重要であるが、「完全に別物」として切り離すのではなく、一貫した設計思想として統合的に捉える必要がある。
次章では、そもそもなぜ保守・運用が必要なのかという視点から、具体的な4つの理由について解説する。
ECサイト保守・運用が必要な4つの理由
ECサイトは一度公開すれば終わり、というものではない。むしろ、本番は公開後に始まる。
「なぜ保守・運用が必要なのか」を明確にすることで、対応範囲や予算の見通しが立ち、無駄なトラブルや想定外の費用発生を防ぐことができる。
以下では、ECサイトにおいて保守・運用が欠かせない代表的な4つの理由を解説する。
1. 安定稼働のため|「止まらないこと」は最低条件
ECサイトが突然表示されなくなる、カート機能が停止する、決済エラーが発生する――。このようなトラブルは、売上の損失や顧客離れを直接的に引き起こす。
とくにセール期間や繁忙期にシステム障害が発生すれば、想定以上の機会損失が生じるリスクがある。
保守体制が整っていれば、障害発生時にも速やかな原因調査と復旧対応が可能となり、ダウンタイムの最小化につながる。
事例:あるアパレル企業では、セール時のアクセス集中に備えて事前の負荷対策を講じた結果、前年と同等のアクセス数にもかかわらず、トラブルゼロを実現した。
2. 機能改善・コンバージョン向上のため|“使われるサイト”に育てる
ECサイトは、単に商品を登録しキャンペーンを更新するだけでは不十分である。顧客の行動データに基づき、継続的に機能や導線を改善し続ける必要がある。
たとえば、
これらの取り組みはすべて「運用」に含まれる。改善を継続できる体制こそが、成果を生むECサイトの前提条件である。
3. セキュリティの維持|信頼を損なう「静かな脅威」への対策
ECサイトは個人情報や決済情報を扱うため、常にサイバー攻撃のリスクにさらされている。保守体制が不十分な場合、以下のような問題が起こりやすくなる。
DIGILOでは、定期的な脆弱性診断やセキュリティパッチの適用支援、監視体制の構築などを通じ、安心して運用できるEC環境の実現を支援している。
4. データ保全・バックアップ|“まさか”に備える保険
万が一の障害や操作ミスによって、商品データや顧客情報が消失すれば、業務が停止するだけでなく、信用の失墜にもつながる。
たとえば
保守体制を構築しておけば、定期的なバックアップと明確な復旧手順が整備されているため、万が一の事態にも冷静かつ迅速に対応できる。
信頼と成果を支える、攻守一体の仕組みづくりを
ECサイトの運営は、「作って終わり」の施策ではない。
売上と信頼を守る“攻め”と“守り”の両輪が揃ってこそ、継続的な成果が生まれる。
次章では、保守・運用に含まれる具体的な業務内容と、その全体像について詳しく解説する。
ECサイトの構築方法別にみる「保守の必要性とコスト」
ECサイトの構築方法にはさまざまな選択肢があるが、どの方式を採用するかによって「保守・運用に必要な作業量」や「コストのかかり方」は大きく異なる。
本章では、主要な構築手法を5つに分類し、それぞれの特徴と保守面での留意点を整理する。
1. モール型(楽天市場・Amazonなど)
特徴:
プラットフォーム側がインフラやセキュリティを全面的に担うため、自社の保守負担が極めて軽い点が特長である。
主な保守ポイント:
商品登録や画像更新など、日常的な運用業務が中心となる
サイト構造に自由度がなく、独自性の表現が難しい
向いているケース:
社内にIT人材がいない企業や、まずは低コストで販売チャネルを確保したい事業者に適している。
2. ASP・クラウド型(Shopify、BASE、カラーミーショップなど)
特徴:
クラウド上で提供されるECサービスを利用する形式であり、デザインや機能のカスタマイズがある程度可能な点が魅力である。中小規模の企業に支持されている。
主な保守ポイント:
システム本体の保守はベンダー側が対応
一方で、自社設定ミスやAPI連携時のトラブル対応は自社責任となる
外部アプリとの連携に関する不具合は、ベンダー対応の対象外であることも多い
注意点:
自由度が高い反面、設定ミスがセキュリティや動作に直結するため、初期設計時には専門知識が不可欠である。
3. パッケージ型(ecbeing、コマース21など)
特徴:
業務利用を前提とした国産ECパッケージをライセンス購入し、カスタマイズして運用する方式である。中〜大規模のECサイトで広く採用されている。
主な保守ポイント:
OSやミドルウェアの更新、セキュリティパッチの適用が必要
バージョンアップの際には、カスタマイズ部分の再調整が求められる
ライセンス費に加え、保守契約や監視サービスの費用が月額で発生するケースが多い
価値:
自由度と信頼性の両立が可能である一方、継続的な保守体制と予算確保が前提条件となる。
4. オープンソース型(EC-CUBE、Magentoなど)
特徴:
ソースコードが公開されており、フルカスタマイズが可能である。導入から運用・保守に至るまで、すべてを自社またはパートナーで担う必要がある。
主な保守ポイント:
セキュリティ対策はすべて自社責任となる
外部モジュールとの整合性検証が都度必要
技術的トラブル時の切り分けと対応力が求められる
注意点:
自由度が高いぶん、保守工数も増加する構造である。特にエンジニアリソースが限られている企業では慎重な判断が求められる。
5. フルスクラッチ型(完全オーダーメイド)
特徴:
業務要件にあわせてゼロから開発する方式であり、柔軟な機能設計が可能である。その一方、最も高い技術力と運用負荷を必要とする構築形態である。
主な保守ポイント:
バグ修正や機能改善を含め、すべて自社管理となる
担当者の交代時には、コードの読み替えや仕様理解に大きな負担がかかるリスクがある
サーバー、ミドルウェア、APIを含む全領域の運用体制が求められる
価値とリスク:
柔軟性と競争優位性を両立できる反面、設計段階での「保守性」への配慮が欠けると、後に大きな技術的負債となる可能性が高い。
DIGILOの支援視点|構築方式ごとの「将来コスト」を見える化
DIGILOでは、構築方法の選定において「初期費用」だけでなく、「保守・運用にかかる将来的なコストとリスク」も含めた全体最適の視点から提案を行っている。
たとえば以下のような対応を通じ、構築後の運用負荷を軽減する体制づくりを支援している。
ShopifyやMagentoとのAPI連携を前提とした設計
設計書やコメントの明示を含む、保守しやすい構成・コード設計
外注・再委託時でもスムーズに引き継げるドキュメントと体制の整備
DIGILOは、将来的に「困らない」仕組みづくりを重視し、伴走型での開発・保守支援を行っている。
保守・運用費用の相場と内訳|費用を決める6つの要素
ECサイトを運営するにあたり、「保守・運用にはどの程度の費用がかかるのか」は、発注者にとって関心の高いテーマである。
一口に「保守費用」といっても、構築方法や対応範囲、体制のあり方によって金額は大きく変動する。
本章では、保守・運用費用の目安と、それを決定づける6つの主要要素について解説する。
保守・運用費の相場感(一般的な参考値)
以下は、月額ベースでの保守・運用費用の目安である。実際の金額は、対応範囲や契約形態によって変動する。
サイト規模 | 構築形態 | 月額保守費の目安 |
---|---|---|
小規模 | ASP型(BASEなど) | 0〜3万円(自社対応中心含) |
中規模 | Shopify/WordPress+EC連携 | 3万円〜 |
中〜大規模 | パッケージ型・オープンソース型 | 10万円〜 |
大規模・特注型 | フルスクラッチ/専用構成多数 | 30万円以上(監視・改修含む) |
保守・運用費用を決定づける6つの要素
以下の6項目が、保守・運用費用に大きな影響を及ぼす主要な要素である。
① 対応範囲(どこまでを保守対象とするか)
対応範囲が広くなるほど、月額費用は高くなる傾向にある。
② サイトの構築方法・技術スタック
構築方式の選定は、その後の運用コストに直結する。
③ バックアップ・監視体制の有無
これらを内製化するか外部委託するかで、コスト構造が大きく変わる。
④ SLA(サービスレベル合意)の設定
高い信頼性を担保するSLAほど、保守費用も高くなる
ビジネス要件に応じた可用性目標をどう設定するかがポイントとなる。
⑤ セキュリティ対応の内容と頻度
ECサイトは個人情報を扱うため、セキュリティ対策はコストをかけてでも最低限確保すべき項目である。
⑥ 委託体制(単独対応か多重委託か)
DIGILOでは、可能な限りワンストップ体制で保守・運用支援を提供し、委託構造の簡素化によるコスト最適化を図っている。
費用は「削る」より「コントロールする」発想へ
重要なのは、単に保守費用を削減することではない。必要なコストの根拠と将来の予測を把握し、計画的に運用できる体制を整えることが求められる。
DIGILOでは、初期段階から以下の観点で支援を行っている:
どの保守項目が必要かを可視化する
どのような体制で継続運用していくべきかを設計する
その結果として、中長期的に安定・安全なECサイト運営が実現できる構造を構築している。
保守・運用を見据えた開発時の設計ポイント
保守や運用に関する多くの課題は、実は「開発フェーズにおける見落とし」から始まっている。
構築時に運用負荷を想定していなかったことで、更新作業が属人化したり、システム改修のたびに高額な費用が発生するケースは少なくない。
運用しやすいECサイトは、設計段階でその基盤が構築される。
本章では、保守性・セキュリティ・連携性を高めるための設計ポイントを解説する。
1. 仕様書と運用ドキュメントの整備
開発後に「挙動が把握できない」「仕様を確認できる資料が存在しない」といった事態を避けるには、実装と並行して情報を整理・文書化することが不可欠である。
最低限整備しておきたいドキュメントの例:
DIGILOでは、更新権限の範囲やコンテンツ反映ルールまでを明文化し、開発完了後も保守しやすい状態で引き渡している。
2. ソースコードの保守性と属人性の排除
保守・改修の容易さを左右するのが「コードの可読性と構造の整理」である。特定の開発者にしか理解できない設計は、後の運用で大きなリスクとなる。
具体的な工夫:
これらの工夫により、将来的な改修や引き継ぎがスムーズになる。
3. セキュリティを考慮した構成と運用ルール
ECサイトにおいてセキュリティ設計は“やっておいたほうがよい”レベルではなく、「設計時点で組み込むべき前提条件」である。
主な設計ポイント:
DIGILOでは、セキュリティ対応ポリシーを策定したうえで開発を進行し、可用性と安全性の両立を実現している。
4. 外部サービスやAPI連携を見越した柔軟な構成
近年は、ChatGPT APIやCRM、LINE連携など、後から追加される外部機能が前提となるケースが増えている。
しかし、設計段階に柔軟性がなければ以下のような問題が生じる。
DIGILOでは、生成AI(ChatGPT API)や各種外部サービスとの連携を前提としたインフラ構成・設計方針を標準化している。
“作って終わり”ではなく、“育てやすく作る”という視点
多くの発注者は「納品後の運用や改善対応」までを十分に想定しないまま開発を進めてしまい、結果的に高コストや混乱に直面してしまう。
しかし、開発初期の段階で少し視点を変えるだけで、保守の手間もコストも大幅に削減できる可能性がある。
DIGILOのご支援内容|保守・運用も見据えた開発体制とは?
DIGILOは、ECサイトの「つくる」だけでなく、「育てる」までを一貫して支援するテクノロジーパートナーである。
開発・保守・運用の各フェーズがスムーズにつながるよう、“将来の運用負荷を見越した設計・構築”を前提とした開発体制を構築している。
本章では、DIGILOが提供する実際の支援内容と、その特長について紹介する。
1. 上流から並走する「設計・要件定義支援」
「要件を整理しきれていない」「どこまで設計すべきかが不明確」。
そのような状態でも、DIGILOは初期のヒアリング段階から保守・運用を見据えた要件定義を支援している。
具体的には、以下の観点を整理する:
「開発前から保守のしやすさに言及してくれたのはDIGILOだけだった」と評価されることも多い重要な工程である。
2. 柔軟なカスタマイズと高セキュリティ対応
ECサイトに求められる機能や構成は、業種や商品属性、販売チャネルによって大きく異なる。DIGILOでは、以下のような柔軟な対応を行っている。
さらに、ChatGPT APIなどの先進技術を活用し、商品検索やFAQ対応、受注管理の自動化といった運用効率化ソリューションの提供も可能である。
セキュリティ面では以下の支援を実施:
安心して事業を拡大できるための基盤を、技術・設計の両面から支えている。
3. 保守・運用フェーズへのスムーズな引き継ぎ支援
DIGILOは、開発完了後も“使い続けられる状態”を実現するため、以下のような支援を提供している。
これにより、「特定の担当者がいないと運用できない」「保守会社との連携が滞る」といった属人化や運用停止のリスクを防ぎ、持続可能な体制を構築している。
持続的に成果を出すための、攻守一体のパートナーとして
保守・運用は“開発後の後処理”ではなく、ECサイトが継続的に成果を生み出すための重要な基盤である。
DIGILOは、単なる開発ベンダーではなく、技術・運用・業務の橋渡し役として、以下のような存在を目指している:
攻守一体で事業を支えるパートナーとして、ECサイト運営の成功を継続的に支援している。
まとめ|保守・運用は「設計思想」からはじまっている
ECサイトにおける保守・運用は、決して「開発が終わってから考えるもの」ではない。
むしろ、初期設計段階において「将来的な保守・運用をどのように行うか」を見据えることこそが、安定的かつ成果の出るECサイトを構築する第一歩である。
本記事で述べたとおり、保守・運用は以下のような役割を担っている。
構築方法の選定、開発時の仕様整理、セキュリティ対応、ドキュメント整備、さらには将来的なAPI連携設計まで、あらゆる工程が「保守・運用のしやすさ」に直結する。
発注者が押さえておきたいポイント(振り返り)
保守・運用に強いECサイトは、結果として“売上にも強い”。
短期的な費用や見た目だけにとらわれず、長く使い続けられるサイトを実現するために、設計段階から「運用を意識した視点」を取り入れることが、これからの発注者に求められている。
DIGILOは、その視点を共有しながら、具体的な体制設計と技術実装を通じて、企業のECビジネスを継続的に支援している。
DIGILOからのご提案|ECサイトの保守・運用まで見据えた開発支援をお考えの方へ
DIGILOは、生成AI・モバイルアプリ・業務特化型ソフトウェア開発の分野において、企業の多様な課題解決を支援している。
柔軟なカスタマイズ対応と高度なセキュリティ設計を強みとし、ビジネス成長を支えるテクノロジーパートナーとして、多くの企業に選ばれてきた。
例えばサイト管理・運用においてこんなお悩みはないだろうか。
DIGILOでは、上記のような課題に対応するため、業界・業種を問わず、以下のような導入実績を有している。
導入事例の一部をご紹介
ECサイトを“作って終わり”にしないために。
DIGILOは、運用・保守・セキュリティまで一貫して支援できる体制を整え、貴社のECビジネスを持続可能な形で支えることを使命としている。
ご相談はいつでも歓迎している。まずはお気軽にお問い合わせいただきたい。