クラウド化の第一歩に最適|インフラ設計の考え方と移行の進め方を徹底解説

 

はじめに|なぜ今「クラウド前提のインフラ設計」が重要か

近年、業務システムやWebサービスの開発・運用において、「クラウド移行」という言葉を耳にする機会が格段に増えている。従来のオンプレミス(社内サーバー環境)では対応が難しかったスピード感や柔軟性、可用性を確保するため、多くの企業がクラウドへシステム移行を進めている。

しかし実際には、「ただクラウドに移せばよい」というわけではない。クラウド環境に合わせた“インフラ設計の再構築”ができていないために、想定していたパフォーマンスやコストメリットが得られないという声も少なくない。

たとえば、次のような悩みはないだろうか?

  • 「クラウドにすれば保守が楽になると聞いたのに、かえってトラブルが増えた」
  • 「委託先から構成図が来たが、自社のセキュリティポリシーに適合していない」
  • 「技術要件が曖昧なまま開発が始まり、クラウド移行後に再設計するはめになった」

これらはすべて、クラウド移行とインフラ設計を“別もの”と捉えてしまったことが原因だ。

DIGILOでは、こうした課題に直面する発注者や開発プロジェクトマネージャーの皆様に向けて、運用・保守・セキュリティまで見据えたクラウド前提のインフラ設計を支援している。

単なる技術導入ではなく、プロジェクト全体のQCD(品質・コスト・納期)に寄与する設計方針とその実践方法を、本記事ではわかりやすく整理して紹介する。

本記事の内容は以下のような方に特におすすめだ。

  • 社内システムやサービスのクラウド移行を検討中の企業担当者様
  • 委託先や開発チームにインフラ設計方針を伝える立場の発注者様
  • 開発後の保守運用やセキュリティまで含めた長期的な設計戦略を考えたい方

「クラウドは柔軟だから、後からなんとかなる」そう考えるのは危険だ。クラウドの自由度を活かすには、それに見合う設計思想が必要不可欠だ。

次の章では、まず「クラウドとオンプレミスの違い」について整理しながら、設計の前提を共有する。

クラウドとオンプレミスの違いと、選定の前提

クラウド移行の第一歩は、「そもそもクラウドとオンプレミスでは、何がどう違うのか?」という基本的理解を共有することだ。技術者だけでなく発注者や非エンジニアも同じ前提で意思決定できるようにすることが、プロジェクト成功には欠かせない。

本章では、それぞれの特徴とどのような観点で選定すべきかを丁寧に解説する。

クラウドの特徴と利点

クラウドはインターネット経由でコンピュータ資源(サーバー、ストレージ、データベースなど)を利用する形態。大手クラウド事業者(AWS、Azure、Google Cloudなど)が提供するサービスを、必要なタイミングで必要な分だけ使えることが最大の特徴だ。

クラウドの主な利点:

  • 初期コストが抑えられる(サーバー購入や設置が不要)
  • スピーディに環境構築できる(数分〜数時間でインフラ準備が完了する)
  • スケーラビリティに優れる(アクセス増加に応じてリソースを自動拡張できる)
  • BCP(災害対策)・多拠点展開に強い
  • クラウド事業者がインフラを管理・保守してくれる

一方で、コストの予測が難しいことや、自社要件に合わせた制限の存在など注意すべき点もあるため、次に示すオンプレミスとの比較で違いを明確にする。

オンプレミスの特徴と限界

オンプレミスとは、自社で物理サーバーやネットワーク機器を所有・運用するスタイル。従来の社内システムでは一般的が、近年はクラウド移行が進んでいる。

オンプレミスの主な特徴:

  • システム構成をフルコントロールできる(ハードウェアやネットワーク構成など)
  • 社内に物理的なサーバー資産がある安心感がある
  • 固定費での運用が可能

ただし、以下の課題が発生しやすい傾向にある:

  • 初期投資と維持管理コストが高い
  • 障害時の復旧に時間と人的リソースがかかる
  • スケールアップ/ダウンが柔軟にできない
  • セキュリティパッチやハード更新が手作業で非効率

クラウドとオンプレミスの比較表

比較項目 クラウド オンプレミス
初期コスト 低い(従量課金) 高い(設備投資が必要)
導入スピード 数分〜数時間で構築可能 数週間〜数か月かかることがある
スケーラビリティ 柔軟に拡張・縮小可能 物理作業や追加投資が必要
管理負担 クラウド事業者が一部を担う すべて自社で管理する
セキュリティ 責任分界モデルによる共用 自社で完全に制御する
可用性・BCP 冗長化・災害対応がしやすい 拠点依存、災害リスクが高い

どちらを選ぶべきかの判断軸

多くの企業は「クラウド=最新/オンプレミス=古い」という単純な二項対立で判断しがちだが、実際には以下の条件を整理して判断することが重要だ:

  • 社内にシステム運用・セキュリティに強い人材がいるか?
  • システムが常時稼働する必要があるか?
  • 法的・業界的な制約があるか?
  • データの保存場所や管理に特殊要件があるか?

そして近年は「必要な部分だけクラウドに置き、残りはオンプレに残す」というハイブリッド構成も選択肢として一般的だ。

次の章では、クラウド移行における5つの代表的方式(Rehost/Refactorなど)と、それぞれに適したケースを詳しく解説する。

クラウド移行でよく使われる5つのパターン

クラウド移行と一口にいっても、その方法はプロジェクトの目的やシステムの状態によって大きく異なる。移行方式を誤ると、予定よりもコストがかかったり、セキュリティ要件を満たせなかったりするリスクがある。

そのため、移行を始める前に「どの方式が自社に適しているか」を検討することが非常に重要である。

ここでは、クラウド移行の代表的な5つのパターンを、わかりやすく整理して紹介する。

1. Rehost(リホスト)|いわゆる“リフト&シフト”

既存のサーバー環境をほぼそのままクラウドに移す方式だ。インフラはクラウド上に移るが、アプリケーションやOSの構成はほぼ変更しない。

こんな場合に向いている:

  • 急いでインフラをクラウド化したい
  • 現状の構成で大きな問題がない
  • アプリ改修にリソースを割けない

メリット:

  • 移行コストが比較的低い
  • 移行スピードが速い

注意点:

  • 最適化されていないため、クラウドの性能を活かしきれない
  • 移行後に別途チューニングや再設計が必要となることがある

2. Refactor(リファクタ)|部分的なコード変更で最適化

アプリケーションの一部をクラウドに適した形に改修(リファクタリング)しながら移行する方式。たとえば、ファイル保存処理をクラウドストレージ(S3など)に変更するなど。

こんな場合に向いている:

  • コアシステムは変えたくないが、部分的にクラウド最適化したい
  • コストやパフォーマンス改善を狙いたい

メリット:

  • クラウドのメリットを部分的に享受できる
  • 開発負荷がRebuildほど高くない

注意点:

  • システム全体の整合性やテストが必要となる
  • 改修範囲の見極めが難しい

3. Rebuild(リビルド)|アプリケーションをクラウド前提で再構築

アプリケーションをクラウド環境に最適な形でゼロから再構築する方式。クラウドネイティブな設計(マイクロサービス化、CI/CD、コンテナ利用など)が可能になる。

こんな場合に向いている:

  • レガシーシステムからの脱却を図りたい
  • スピード感ある開発・運用を重視したい
  • 将来の拡張性を確保したい

メリット:

  • 可用性・拡張性・開発生産性が大きく向上する
  • 最新技術を活用しやすい

注意点:

  • 開発期間・コストが大きくなりがち
  • 新しい運用体制・知見が必要になる

4. Replace(リプレイス)|既存アプリをSaaSに置き換える

既存の社内アプリケーションをクラウドのSaaS(例:Google Workspace、Salesforceなど)に置き換える方式。業務の標準化・効率化を進めたい企業に適している。

こんな場合に向いている:

  • アプリ自体にこだわりがなく、業務を優先したい
  • すぐに稼働させたい業務がある

メリット:

  • 導入が早い
  • 運用・保守の手間が大幅に軽減される

注意点:

  • カスタマイズ性が制限される
  • 自社固有の業務に合わない場合がある

5. Hybrid(ハイブリッド)|オンプレとクラウドの併用

すべてをクラウドに移行するのではなく、オンプレとクラウドを適材適所で使い分ける方式。重要なシステムはオンプレに残しつつ、汎用的なシステムはクラウドで運用する構成。

こんな場合に向いている:

  • 特定の業務はオンプレに制約がある(例:法規制、社内ネットワーク要件)
  • 段階的にクラウド化したい

メリット:

  • 既存資産を活かしつつ、クラウドの利点も享受できる
  • リスクを抑えた段階的な移行が可能

注意点:

  • システム連携やデータ同期の設計が複雑になりやすい
  • 管理コストが分散するため設計力が問われる

これらのパターンを見てわかる通り、「どの方式を選ぶか」は、技術的な観点だけでなく、業務・コスト・人的体制など複数の要因を踏まえた判断が必要だ。

DIGILOでは、こうした選定においても、「保守まで見据えた構成案」や「セキュリティ要件に基づく責任分界設計」を含めて提案している。

次の章では、実際にクラウド移行プロジェクトをどう進めていくか、6つのステップに分けて紹介する。

クラウド移行プロジェクトの6ステップと設計観点

クラウド移行は、単なる“システムの引っ越し”ではない。業務要件・システム構成・運用体制・セキュリティなど、多くの要素を同時に見直しながら進める必要がある、総合的な設計プロジェクトだ。

ここでは、クラウド移行を成功に導くための6つのステップと、それぞれの段階で重視すべき設計の観点をわかりやすく解説する。

① 移行目的と制約の整理(業務/コスト/可用性)

まず最初に行うべきは、なぜクラウドに移行するのか、その目的とゴールを明確にすることだ。たとえば、「運用コスト削減」「災害対応」「拠点間連携の強化」など、目的によって選ぶ構成も採用するクラウドサービスも変わってくる。

加えて、以下のような制約条件も早い段階で洗い出すことが肝要である。

  • 業務上、絶対に停止できないシステムはあるか?
  • セキュリティ・ガバナンス要件(例:国内リージョン限定)
  • 外部連携や既存システムとの接続要件

目的と制約の整理を怠ると、移行後に「使いづらい」「コストが想定外」といった問題に直結する。

② 対象システムの棚卸しと現状分析

次に行うのが、既存システムの棚卸しだ。オンプレミスにあるサーバーやアプリ、バッチ処理、ネットワーク構成などを可視化し、それぞれの役割や依存関係を把握することが求められる。

このフェーズでの主なポイントは以下の通り:

  • アプリごとの性能要件/稼働時間/連携先の整理
  • ライセンスやOSバージョンなどの制約確認
  • 設計書・構成図の有無と精度の確認

この段階で正確な情報が揃っていない場合、後工程で設計ミスやスケジュール遅延が発生するリスクが高まる。

③ クラウド環境の選定と構成パターン設計

続いて、どのクラウドサービス(AWS、Azure、GCPなど)を使うのかを決定する。加えて、以下のような構成を考慮する必要がある。

  • IaaS/PaaSのどちらを使うか?
  • 可用性の確保(冗長構成・ゾーン設計など)
  • データベース・ストレージ構成の選定

このフェーズでは「構築のしやすさ」だけでなく、保守・監視・障害対応のしやすさや、セキュリティとの整合性も考慮することが重要だ。

DIGILOでは、可視化しやすいインフラ構成図を用いて、発注者・受託者間での設計意図の共有を行っている。

④ セキュリティ・ガバナンスの設計(責任共有モデルを意識)

クラウド移行で見落とされがちなのが、セキュリティ設計と責任範囲の明確化だ。クラウドでは「責任共有モデル」と呼ばれる考え方があり、インフラの一部はクラウド事業者が管理するが、設定ミスやアクセス制御はユーザー企業の責任となる。

以下の項目を丁寧に設計・設定する必要がある:

  • アクセス権限の細分化(IAMポリシー設計)
  • 通信の暗号化(SSL/VPN/TLS)
  • 監査ログ・不正アクセス検知の導入
  • 外部連携・API公開時の制限と認証

クラウドは「安全な環境」ではなく、「安全に使うための設計が必要な環境」ことを忘れてはならない。

⑤ PoCやリハーサルによるリスク検証

移行前には、必ずPoC(概念実証)や移行リハーサルを行うべきだ。これにより、以下のようなトラブルを事前に回避できる:

  • 想定通りのパフォーマンスが出ない
  • データ移行に時間がかかりすぎる
  • 接続先システムとの整合性に問題がある

特に重要な業務システムや夜間バッチ処理などは、限定的なテスト環境での事前検証を強く推奨する。

⑥ 本番移行と運用設計(監視/アラート/保守体制)

最後に、本番環境への移行を実施し、その後の運用・監視体制を構築することが成功のカギだ。

移行だけで終わらせず、以下のような体制を整えておくことが、クラウド活用の成否を分ける。

  • 監視ツールの導入(死活監視、リソース監視、ログ監視)
  • アラート対応フロー(障害対応マニュアル含む)
  • 保守担当の明確化とドキュメント整備
  • 月次でのコスト監視と最適化(コスト爆発の防止)

DIGILOでは、構築だけでなく、「運用が継続できる設計」を重視した支援を提供している。

次章では、こうした設計が不十分だったために起こる「よくある失敗例」と、それを未然に防ぐためのポイントを事例を交えて紹介する。

よくある失敗と、再発防止のための設計チェック

クラウド移行は柔軟性とスピードを手に入れられる一方で、「設計が甘かったせいで、かえって運用負荷が増えた」というケースも少なくない。

この章では、よくある失敗例を紹介しながら、どこで設計判断を誤ったのか、どうすれば防げたのかを具体的に解説する。

1. 「クラウド=コストが安い」と思い込んでしまう

よくある失敗:

「サーバーを購入しなくていいから、クラウドの方が安くなるはず」と考え、リフト&シフトで既存構成をそのまま移行。しかし、インスタンスのサイズ過多や常時起動によって、オンプレ時代よりもコストが膨らんでしまった。

原因:

  • クラウドの従量課金モデルに対する理解不足
  • 適切なリソース設計やオートスケール設定が不十分
  • 運用監視によるコスト最適化の仕組みがない

防止策:

  • 初期段階でTCO(Total Cost of Ownership)シミュレーションを実施
  • 「常時稼働するか否か」など業務要件と照らし合わせた構成チューニング
  • DIGILOのようなパートナーと、コスト設計×構成設計を同時に進める体制を検討

2. 「クラウド=セキュリティも任せられる」と考えてしまう

よくある失敗:

「クラウド事業者が守ってくれるから安心」と思い込み、アクセス制限やログ監視の設計を怠った結果、管理画面が外部に露出し、不正アクセスが発生してしまった。

原因:

  • 責任共有モデルを理解せず、ユーザー側の設定責任を放置
  • IAM(アクセス制御)の設計不備
  • 通信の暗号化や多要素認証が未導入

防止策:

  • プロジェクト初期に責任範囲マトリクス(RACI表)を定義
  • IAM設計、監査ログ、アラート設計をインフラ構成の一部として扱う
  • DIGILOでは、セキュリティガイドラインに基づいた設計テンプレートを用意し、発注者・受託者間で共有を推進

3. 運用設計を後回しにしてしまい、移行後にトラブル

よくある失敗:

移行そのものに集中し、運用監視・保守設計を後回しにした結果、障害が起きた際に誰も対応できず、システム停止が長期化してしまった。

原因:

  • アラート発報の設定漏れ
  • 責任者の不明確さ(運用フェーズへの引き継ぎ不足)
  • 監視ツール導入の後付け

防止策:

  • 本番移行前に「監視とアラート発報のテスト」を必須工程に
  • 運用フェーズの体制表・対応手順・SLA(サービスレベル合意)を事前に作成
  • DIGILOでは、移行前のPoC段階で「運用時の課題になりそうなポイント」を洗い出し、事前に設計へ反映

まとめ:失敗を「設計」の視点から防ぐ

クラウド移行の失敗の多くは、技術力の問題ではなく、設計・共有不足による認識ズレや対応漏れが原因だ。以下の3点を押さえておくことで、リスクを大きく減らすことができる。

  • 目的と制約の明確化(なぜ移行するのか/何を守るのか)
  • 運用・セキュリティを含めたトータル設計
  • パートナー企業や再委託先とのドキュメント共有と責任明確化

DIGILOでは、技術視点だけでなく、発注者・受託者双方の視点を取り入れた「失敗しないクラウド設計支援」を提供している。

次章では、これらのベストプラクティスを活かした構成例や設計テンプレートを紹介する。クラウド構成のイメージが具体的に湧く内容となっているため、ぜひご覧いただきたい。

DIGILOが推奨するクラウドインフラ構成テンプレート

クラウド移行において、理想的な構成とは「セキュアかつ拡張性があり、運用負荷を最小化できること」だ。DIGILOでは、実際の開発・保守の現場経験を踏まえ、「すぐに使えて、再委託先とも共有しやすいインフラ構成テンプレート」を整備している。

この章では、代表的な3つの構成例をもとに、発注者としての判断材料や、設計意図をどのように共有すべきかを解説する。

1. Webアプリ+API+DB構成|標準的な三層構造モデル

概要:

一般的な業務アプリケーションやWebサービスで使われる、Webサーバー・アプリケーションサーバー・データベースの三層構成をクラウドで最適化したパターンだ。

構成例の特徴:

  • Web/APレイヤはAuto Scaling対応の冗長構成
  • DBはマネージドサービス(例:Amazon RDS)で耐障害性を確保
  • WAF/CDN/IAMなどセキュリティレイヤを事前に設計

導入効果:

  • アクセス集中時も自動でリソース増強(高い可用性)
  • 保守・障害対応が不要なDBサービスで運用負荷を軽減
  • セキュリティや監査ログも初期設計に含められる

ポイント:

  • 冗長構成の前提で設計するため、運用時に想定外のダウンが起きにくい
  • 監視・アラート・ログ基盤(例:CloudWatchなど)との連携を忘れずに設計

2. ChatGPT APIや外部AIサービス連携を含む構成

概要:

生成AIなど、クラウド外部のAPIやSaaSを活用した業務支援ツールを構築する際の構成例。

構成例の特徴:

  • ユーザーリクエストをバックエンドでChatGPT APIなどと連携
  • 認証・アクセス制御のためのAPI Gateway+Lambda構成(またはFargate等)
  • ログデータやリクエスト履歴をセキュアに保管(S3 + CloudTrail)

導入効果:

  • 開発期間を短縮しつつ、AI連携サービスをスピーディに導入可能
  • アクセス管理やデータ保管設計により、コンプライアンス要件にも対応

ポイント:

  • 外部APIのエラー処理・応答速度に合わせた非同期設計を取り入れる
  • ユーザーの入力データを「残すか/残さないか」など、プライバシー観点での設計方針を明示する

3. 可用性・セキュリティ・メンテ性を両立した実践テンプレート

概要:

複数チーム・長期運用を前提とするプロジェクトでDIGILOが推奨する、“手離れが良く、安全で、成長できる”構成テンプレート。

構成例の特徴:

  • 管理者・運用者・監査者など、ロールベースでIAMを設計
  • 全コンポーネントがInfrastructure as Code(IaC)で管理され、変更履歴を追跡可能
  • 各種監視/死活監視/コストアラート/脆弱性検知を網羅

導入効果:

  • 受託先・運用担当者が変更しても設計意図が明確で、保守しやすい
  • セキュリティ事故や設定漏れのリスクを軽減

ポイント:

  • 初期設計段階で「引き継ぎやすさ」「可視化」「自動化」を設計要素に含める
  • 技術的な属人性を排除し、長期的に安定した運用を支援する

発注者に求められる「構成意図の共有力」

いくら優れた構成を用意しても、それが再委託先や運用担当者に正確に伝わらなければ意味がない。

DIGILOでは、構成図・通信フロー・責任分界図をセットにした「設計共有パック」を用意し、プロジェクト関係者全員が同じ設計意図を共有できる体制を整えている。

次の章では、この構成共有の重要性を踏まえ、元請と再委託間での設計共有や責任の明確化について解説する。

元請・再委託間での設計共有とドキュメント整備のポイント

クラウド移行プロジェクトでは、元請(発注者側)と開発・保守を担う再委託先(受託開発会社)との情報共有の質がプロジェクトの成否を左右する。

いくら技術的に優れた構成を描けても、それが正しく伝わっていなければ、「意図と異なる設計」や「運用後のトラブル」につながりかねない。この章では、元請として意識すべき設計共有のポイントと、トラブルを防ぐためのドキュメント整備について解説する。

曖昧な仕様を防ぐための構成設計図と責任分界

再委託先が戸惑いやすいポイントの一つが、「自分たちがどこまで設計・保守の責任を持つのか」という境界だ。責任範囲が不明確なまま構築が進むと、次のような問題が起こりやすくなる。

  • APIの接続障害が発生したが、どちらが原因切り分けをするのか不明
  • 想定と異なるセキュリティ設定が実装されたまま本番リリース
  • 運用監視や障害時の対応手順が共有されていなかった

これを防ぐには、以下のようなドキュメントの整備が有効だ。

  • インフラ構成図(クラウド上のリソース全体像)
  • 通信フロー図(システム間・API連携などの関係性)
  • 責任分界図(監視・対応・変更管理などの役割分担)
  • アラート対応フロー/連絡体制表(障害時の動き方)

DIGILOでは、これらをプロジェクト開始時に「設計共有パック」としてセット提供し、全関係者の共通理解を促進している。

再委託先に伝えるべき「運用しやすさ」視点

多くのトラブルは、設計が「構築しやすさ」だけに偏ってしまい、「運用のしやすさ」が設計に反映されていないことが原因だ。

元請としては、次のような運用視点を再委託先と共有することが重要となる。

  • 障害対応は誰がどこまで行うのか?
  • メンテナンスやバージョン更新の予定はどうするか?
  • ログの保管ポリシー・ログローテーション設計はどうなっているか?
  • 再委託先が交代しても対応できるような引き継ぎ設計になっているか?

特にクラウドでは、設定一つでセキュリティやコストに影響が出るため、属人的な判断ではなく仕組みとして定義することが求められる。

トラブル時の切り分け基準と事前合意事項

問題が発生した際、「どこまでが誰の責任か」が曖昧なままでは、対応が後手に回り、ユーザーへの影響が大きくなってしまう。

そのため、あらかじめ“切り分けルール”や“連絡体制”を定めておくことが重要だ。

例えば、以下のような観点で整理しておくとよい。

  • クラウドサービス障害時はどのように通知し、誰がベンダーと連絡を取るのか?
  • セキュリティインシデント発生時の初動対応(アクセス遮断、ログ保全)はどのチームが行うか?
  • コストの異常増加を検知した際の責任範囲と調査フロー

こうしたトラブル時の“責任境界”と“合意済み対応フロー”があるだけで、対応のスピードと品質は格段に向上する。

設計共有は「ドキュメント+対話」で

いくらドキュメントが揃っていても、それだけでは本当の設計意図は伝わらない。特にクラウドの構成は柔軟性が高いため、「なぜその構成を選んだのか」「どのような運用を想定しているのか」といった設計者の思考を対話で共有する場が必要だ。

DIGILOでは、図解資料と対話をセットにした「キックオフ設計レビュー」の場を設け、元請・再委託の垣根を超えて設計思想をすり合わせるプロセスを推奨している。

次の章では、これまでの知見を踏まえ、クラウド移行とインフラ設計を成功させるためのまとめと、発注者が取るべきアクションを紹介する。

まとめ|インフラ設計×クラウド移行で成果を出すために

クラウド移行は、単なる技術トレンドの追随ではなく、事業成長や業務効率化を実現するための重要な変革の一歩だ。そして、それを支えるのが「インフラ設計」の質だ。

本記事では、クラウド移行における基本的な考え方から、代表的な移行パターン、設計・運用・セキュリティの実践知までを紹介してきた。改めて、発注者として押さえておきたい重要ポイントを以下に整理する。

1. インフラ設計は“運用まで含めて”考える

設計段階でパフォーマンスやセキュリティ、将来的な拡張性まで視野に入れておくことが、移行後の運用トラブルやコスト増を未然に防ぐ鍵となる。

特に、ログの設計、障害時のアラート設計、構成変更の履歴管理(IaC)など、「使い続ける視点」が設計に含まれているかが重要だ。

2. 設計意図は再委託先とも“共通言語”で共有する

クラウドは柔軟がゆえに、設計者の意図が伝わらなければ、実装が部分的にズレてしまい、全体の整合性が崩れるリスクがある。

そのためには、構成図や責任分界図だけでなく、「なぜこの構成にしたのか」という背景や目的を共有できるドキュメントと対話の場が必要である。

3. 経験ある技術パートナーと“上流から伴走する”ことが成功の鍵

クラウド移行は、要件定義・設計・構築・移行・運用と、すべてがつながっているプロジェクト。特にセキュリティやガバナンス、再委託の管理に課題がある企業ほど、上流から一貫して伴走できる技術パートナーとの連携が成功の確率を高める。

DIGILOでは、単なる構築支援ではなく、「発注者視点で考える設計と提案力」を強みに、クラウド移行の構想段階から保守体制の整備まで、ワンストップで支援している。

次の一歩を踏み出すために

  • 「クラウドに移行したいが、何から始めればいいか分からない」
  • 「現行構成を見直したいが、どこに課題があるのか分からない」
  • 「再委託先とのやり取りが属人化していて不安がある」

このような課題を感じている方は、まずは設計の棚卸しや可視化から始めることをおすすめする。

DIGILOでは、無料相談や構成診断を通じて、最適な移行戦略の立案から伴走可能だ。

DIGILOからのご提案|クラウド移行を見据えたインフラ設計支援をご検討中の方へ

DIGILOは、生成AI・モバイルアプリ・業務特化型ソフトウェア開発の分野で、多様な業界課題の解決を支援してきた。

柔軟なカスタマイズ対応と高度なセキュリティ設計を強みに、企業のビジネス成長を支えるテクノロジーパートナーとして選ばれている。

こんなお悩みはないだろうか?

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  • 「セキュリティや運用面まで考慮した構成で、安心して任せられるパートナーを探している」

DIGILOでは、これまでに以下のような業界・企業への導入実績がある。

  • ヘルスケアフォーム企業K社:Azure上でのテスト環境構築とシステム開発により、構築費・保守費を大幅に削減
  • コンサルティング企業F社:ChatGPTを活用した調査レポート作成ツールと、新規事業のための計画生成Webアプリを開発
  • プロジェクト管理ツール開発企業S社:心理的安全性を意識した業務設計支援ツールを構築し、非専門人材でも使いやすいUIを実現
  • 教育コンテンツ企業L社:AIチャットボットの導入により、問い合わせ対応の効率化と顧客満足度の向上を実現
  • 医療ソフトウェア会社L社:ギャンブル依存症患者向けの治療支援モバイルアプリを開発し、データ連携とプライバシー管理を両立

相談は無料なのでプロジェクトの構想段階からでも、ぜひ安心してご相談いただきたい。

DIGILOのテクノロジーがあなたの次の一手を一緒に考える機会になれば幸いだ。

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