開発会社への発注段階で、どのようなアプリを作るのかという概要は既にまとまっているだろう。しかし、概要の状態では開発会社はまだ開発をスタートさせることができない。
詳細仕様を決めていく「外部設計」を行う必要があり、特に、両社で共に行う「UIの詳細設計」を行う必要がある。
ここでは、本格的な設計着手前に行うべきことや、設計の役割分担、注意点を確認していこう。
企画を再確認する
本来、「企画」という段階は発注までの5W1H(費用を抜いた要件)をまとめた段階で終わっているはずであるが、設計工程に入る前に、いま一度その企画で進めるのかどうかを確認しておきたい。
5W1H
- Why:なぜそのアプリを作るのか
- What:何を作るのか
- Where:どこまで作るのか
- When:いつリリースしたいのか
- Who:誰が作るのか、誰が何をするのか
- How:どのように実現するのか
機能が膨らみすぎていないか
既に発注を行ったあとに、なぜ5W1Hの再確認が必要なのか疑問に思うかもしれないが、5W1Hの観点で機能が膨らみすぎていないかを再確認することは、今後を左右する重要なポイントである。
発注までの段階で、社内外の多くの人の意見を拾った結果、WhyやWhatからずれ、目的がぼやけたアプリになっていないか、Whereが途方もない所にないか、などを冷静に見ていきたい。
開発に着手してしまうと引き返すことは非常に困難で、この段階であれば再検討や見直しが間に合う最後のタイミングである。
アプリ開発の経験がある企業でも「なにかを作る」となった場合、どうしても機能が膨らみがちで、これは「百害あって一利なし」である。
例えば、機能が膨らんだ場合のデメリットやリスクとして、
- 開発に時間がかかる
- 開発費用が高くなる
- リリースまでに時間がかかることにより機会損失が生まれる
- 作ったは良いが搭載した機能が予想に反しあまり使われない
- 他社に先を越される
- 機能が煩雑で使い勝手の悪くなり、ユーザーにも響かない
まずは小さく作り、ユーザーの反応や見直しを行いながらバージョンアップしていく方法が望ましい。
設計で何をするのか、誰が行うべきか?
設計には外部設計と内部設計があり、発注側が深く携わる設計は「外部設計」にあたる部分で、UI(ユーザインタフェース)の部分、いわゆる画面設計や、UX(ユーザエクスペリエンス)について仕様を決めていく。
一般的には、発注を行った段階で作業主体は開発会社になると考えて良く、UI設計も開発会社が主体となって進め、提案された内容に合意しながら進めることが多い。
ただし、発注側の想いや仕様に対する要求度合い、予算などによっては以下のようなパターンが考えられる。
<UI設計の進め方のパターン>
- 開発会社主体
- 発注側主体
- 第三者主体
少し詳しく見ていこう。
1.開発会社主体
先の解説の通り最も一般的な方法で、開発会社が主体となって検討し、レビューと合意を繰り返しながら進める。
2.発注側主体
発注側がUI設計まで行い、開発会社はその通り開発を行う。
発注側にアプリ開発経験があったり、社内に設計まで行える企画チームやデザイナーがいる場合や、発注予算をできるだけ抑えるために社内で行う場合のパターンである。
経験がある場合は全く問題ないだろう。
レビューや摺合せを発注側主体で進め、実現可能なのかを開発会社に確認しながら進める。
3.第三者主体
発注側が開発会社とは別に、コンサルティング会社や専門の会社を使い、市場調査やUI設計を行う。
発注側に比較的予算に余裕があり、失敗しないプロダクトをより確実に作ろうという意図で取られがちなパターンであるが、最もおすすめしない方法である。
一見確実な方法に見えるが、システム開発はシンプルであることが一番で、登場人物が増えるほどリスクも高くなる。
よほど成功事例を持っている会社を選択するなら話は別だが、開発会社を信頼して任せることもひとつの成功要因である。
多少不足があっても、調査・提案の作業まで行ってくれる開発会社か、その開発会社が関係を持っている関連企業など、まとめて発注できる形を取ることがベストだろう。
また、第三者が設計を行う場合は責任の所在が曖昧となるため、ダウンロード数を担保してもらうなど、費用のかけ損にならないよう明確なゴールや数値を設定すべきである。
設計工程で注意すべき点
設計工程で注意すべき点は、ずばり「スケジュールの遅延」である。
前項の「3.第三者主体」で行う場合を除き、外部設計工程は両社で合意しながら進めるため、判断・検討する時間が必要となったり、時には後戻りがあったり、実現可能か調査する時間が必要となったりなど、どうしてもスケジュールが遅れがちである。
スケジュールを詳細に組み、遅延がないよう開発会社と共に集中して進めて欲しい工程である。
後の工程は発注側が少し手を離せる内部設計や開発工程に入っていくことになるため、外部設計では、担当者はしっかりと時間を確保し、仕様を決めるという発注側の責務をしっかり果たしていこう。