ビジネスを展開していく上で、今や欠かせなくなっているスマートフォンアプリ。
通常のシステム開発の流れと大きく変わることはないものの、アプリ特有のステップや気をつけるべき点がある。
ここでは、アプリ開発の全体の流れをおさえ各工程を理解しながら、次回以降、各ステップを具体的に確認していくことで、実際にアプリ開発を進める際に失敗しないための知識や実務を進めるための知識を付けていく。
アプリ開発のおおまかな工程
アプリ開発は、おおまかに以下6つの工程がある。
- 5W2H(何のために、何を作るのかなど)を明らかにする
- 開発会社の選定、契約と発注
- 企画と設計
- 開発
- テスト
- 納品と運用
以下、各工程の概要を確認していく。
1.5W2Hを明らかにする
開発会社の選定を行う前に、まず、何をしたいのかを明確にする必要がある。
5W2H で整理していくと漏れがなく、明確に開発会社にも伝えることができる。
- Why :なぜそのアプリを作るのか
- What :何を作るのか
- Where :どこまで作るのか
- When :いつリリースしたいのか
- Who :誰が作るのか、誰が何をするのか
- How :どのように実現するのか
- How much :予算はいくらか
2.開発会社の選定、契約と発注
5W2Hをある程度書けたら、開発会社の選定に入る。
「アプリ」とひとことに言っても、ゲーム・フィットネス・SNS・金融・お役立ち系など、様々な分野があり、それは、開発会社にも開発分野の得手不得手があることを意味する。
選定した開発会社が経験のない分野の開発の場合、コストが高くなったり、スケジュールが長くなったりすることがあるため、似たような開発をしたことがある会社を選定することがリスクを低くするポイントにもなる。
3.企画と設計
5W2Hで書いたものを、開発会社と共に具体的にしていく工程である。
ターゲットの具体化やユースケースの作成、実際の画面イメージの作成や機能のリストアップを行い、設計を進めていく。
この「企画・設計」で「要件定義」したものが開発の土台となるとなるため、開発会社とは密なコミュニケーションが必要となる重要な工程である。
そして「企画・設計」でようやく開発するものが詳細化されることになる。
契約段階では全容や詳細が見えないため、開発会社は概算見積に留めることも多く、具体的な要件定義が完了した段階で再見積もりをしたいと要求されることがある。
その場合、お互いのリスク回避手段のひとつとして、契約を以下2つに分けることも検討する。
- 要件定義(企画、外部設計)まで
- 内部設計、開発、テスト、納品
4.開発
アプリ開発のメイン工程である、実際のコーディング作業である。
開発会社に任せる工程ではあるが、任せきりで放置することがないよう、定例会議などは継続し、問題が発生していないか、進捗確認や開発中のアプリの動作をデモして貰うなどでチェックしていくと良い。
5.テスト
開発したアプリをテストする工程で、発注先の開発会社が行うものだが、開発工程と同じく、逐次状況の確認を行う。
一般的には、テストの内容、テスト件数、バグの発生率、修正率などを目安に状況を把握する。
また、スマートフォンアプリはOSも、端末の機種も沢山あり、全ての端末でテストすることは現実的ではない。
予め発注の際に、以下を合意しておくことが好ましい。
- テスト対象のOS
- テスト対象の端末
- 開発中に最新OSがリリースされた場合の対応方法
- 開発中に最新のiPhoneが発売された場合の対応方法
- 端末の提供をどちらが行うか
6.納品と運用
テストが完了すると、いよいよ納品となるが、開発したアプリはGoogleのPlayストア、AppleのAppStoreに「ストア申請」をしなければ世に出ず、使えない。
この「ストア申請」もアプリ開発特有の工程である。
ソースコードや設計書、実行ファイルを貰っただけでは世に出せないため「納品」の定義をどこに置くかについても契約時点で明らかにしておくと良い。
例えば以下のような形が考えられる。
- apk、ipa(アプリの実行ファイル)を納品物のひとつとし、ストア申請は自社で行う
- ストア申請も含め、納品作業として開発会社に依頼する
1は、自社である程度の知識が必要である。
アプリをリリースした経験がない場合は、開発会社に手伝って貰うか、最初は2にする方がスムーズに進めることができる。
とはいえ開発会社に全て委ねるのはリスクと捉える場合もある。その場合、2回目以降のリリースは自社で行うなど、双方にとって良い方式を取る。
そして、アプリは開発してリリースしたら終わりという訳ではない。OSのアップデートや不具合対応、ユーザの要望の対応など、必ず「運用」が必要となってくる。
運用については、初期の開発費用とは別費用になるため、運用費がいくらかかるのかも最初の段階で見積もり、運用の範囲や内容をある程度発注先と合意しておく。
今回は、アプリ開発の工程について、概要を解説した。次回以降は、各工程をより詳しく解説していこう。