開発の効率化を狙い、iOSやAndroidなど複数のプラットフォームに対応するための開発フレームワークの必要性が年々増している。
ここでは、導入や載せ替えを検討している方に向け、2021年のトレンドをおさえながらそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説しよう。
モバイルアプリ開発フレームワークとは
iOS、Androidなどのプラットフォームでアプリケーションを実行するには、それぞれの環境に合わせたプログラミング言語で開発する必要があり、対応するプラットフォームが多くなれば、その分開発コストや開発期間がかかってしまうという問題がある。
これを解決するのが「モバイルアプリ開発フレームワーク」である。
1つのコードでiOSやAndroidなど複数のプラットフォームで実行できるため、コストも抑えながら迅速かつ効率的に開発が行えるという大きなメリットがある。
2021年のトレンド トップ5
数あるフレームワークの中でのトップ5は以下のとおりである。
- 1位 ReactNative
- 2位 Flutter
- 3位 Ionic
- 4位 ApacheCordova (PhoneGap)
- 5位 Xamarin
それぞれどのような特徴があるのか、メリット・デメリット、アプリの事例などを詳しく見ていこう。
1位 ReactNative
2015年、Facebookによって公開されたオープンソースのフレームワークで、強力なコミュニティ、高速で安定したパフォーマンスに加え、信頼性があるためモバイルアプリ開発者の間で最も人気がある。
- 開発言語
JavaScript
- メリット
- Android、Android TV、iOS、macOS、tvOS、Web、Windows、UWP、さまざまなプラットフォーム用のアプリケーションに対応している。
- ネイティブに近いUI、レスポンスの良いインターフェースを作成できる。
- ホットリロード機能により逐一コンパイルの必要がなく、効率良い開発が行える。
- デメリット
- デバッグが困難。
- アップデートが頻繁に行われるため、バージョンアップ対応が随時必要である。
- ネイティブエンジニアにとっては学習コストが高い。
- ReactNativeで作られたアプリ
Facebook、Instagram、Skype、UberEats、Salesforce
2位 Flutter
FlutterはGoogleのオープンソースフレームワークである。
すぐに使用できるプラグイン、さまざまなウィジェット、美しく高性能なクロスビルドを支援する独自のレンダリングエンジンを提供しているため、他のフレームワークと比べ一歩先を進んでいるといえる。
- 開発言語
Dart
- メリット
- 2Dグラフィックライブラリ(Skia)を使用しており、高速で非常に効率的である。他のフレームワークと比較し、パフォーマンスが大幅に向上する。
- AndroidとiOS別々にインターフェースを作成する必要がなく、すべてのプラットフォームでUIコードとUIの両方を共有できる。
- ドキュメントが充実しており、コミュニティも幅広い。
- デメリット
- フレームワークがまだ未熟でライブラリが十分ではないため、場合によってはネイティブでの開発が必要になる。
- アプリサイズが大きい。
- クラッシュするなど、ライブラリが完全には安定していない。
- Flutterで作られたアプリ
GoogleAds、eBay、Groupon、Alibaba
3位 Ionic
2013年、ApacheCordovaとAngularJSによりに開発されたフレームワークである。
Cordova上で使うUIフレームワークとしても人気のあるフレームワークのひとつで、Apache Cordova上に構築されHTML5を用いたクロスプラットフォームのハイブリットアプリケーションを開発できる。
- 開発言語
Typescript
- メリット
- Angular、HTML、CSS、およびJavaScriptの知識だけで、開発を開始できる。
- すぐに使用できる、使いやすいUIコンポーネントが多数ある。
- ネイティブのライブラリを使用するための多くのプラグインが用意されている。
- デメリット
- ネイティブプラグインが不安定である。
- デバッグが難しい。
- グラフィックやアニメーションが多いアプリケーションは、パフォーマンスが悪い。
- Ionicで作られたアプリ
The World Bank、Oro、Storyo
4位 ApacheCordova (PhoneGap)
2011年、AdobeSystemsがCordovaを開発したNitobiを買収しリリースされたフレームワークである。
Cordovaは、HTML5、JavaScript、CSS3を使用してWebView上でアプリを実行する。
- 開発言語
HTML5、JavaScript、CSS3
- メリット
- 豊富なリソースが公開されており、プラグインも多数存在する。
- Webエンジニアがネイティブアプリの知識なく開発できる。
- IDEプラグインを使用した豊富なデバッグ機能がある。
- デメリット
- WebViewのため、ネイティブのSDKの導入が簡単にできない。
- DOMが大きくなるに従い動作が重くなり、数秒固まるなどの現象が発生するため、アプリのパフォーマンスとレスポンスについて常に考える必要がある。
- プラグインを独自で作成する場合、ネイティブの専門的な知識が必要である。
- ApacheCordovaで作られたアプリ
日刊市况通信 電子版、MarketWatch、Diesel
5位 Xamarin
マイクロソフトによって開発された無料のオープンソースフレームワークである。Microsoft .NET FrameworkとC#を使用して開発を行える。
- 開発言語
C#
- メリット
- プラットフォーム間で平均してコードの90%を共有できる。
- C#と.NET環境を知っていれば十分なため、非常に使いやすい。
- カメラやGPSなど、デバイスのハードウェアを完全にサポートしている。
- デメリット
- サードパーティのライブラリやツールとの互換性に問題がある。
- アプリサイズがネイティブアプリと比較して大きい。
- UI開発に時間がかかる。複雑なUIを搭載したいアプリには適さない。
- Xamarinで作られたアプリ
Microsoft News、Azure、UPS
採用するプラットフォームの選択は悩ましい問題であるが、開発したいアプリの特性とプラットフォームの特徴、メリット・デメリット、向き・不向きを踏まえ、試験的に導入するなどしながら進めると良いだろう。